きらりのお姉ちゃんが亡くなったのは、今から二年くらい前のことで、きらりが十歳のときのことだった。

 お姉ちゃんが死んでしまってから、きらりは小学校に行くことができなくなって、家の中から外に出ることができなくなって、自分の部屋からも、あんまり外に出ることができなくなった。

 今のように街の中を歩くことができるようになったのも、本当につい最近になってのことだった。

 それからきらりはよく散歩をするようになった。

 気分転換にもなるし、いいことだよね、とお母さんは言ってくれた。

 できるだけ、遠くにはいかないように、気をつけてね、とお父さんはきらりに言った。

「はい。わかりました」

 そう言って、きらりは家を出て、いつものように街の中を散歩した。

 そして三つ葉と出会った。


 喫茶店『雨の音』


 透き通るような水のように


「未来はどこあると思う? 私は未来はきっと(自分の胸を指さして)ここにあると思う」と三つ葉は言った。

「ここに」

 きらりは自分の胸を見ながらそう言った。

「そう。きっとそこにあるんだよ。君の未来がさ」

 ふふっと笑って三つ葉はいう。

「ここに、ある」

 きらりはそっと自分の胸の上に自分の小さな両方の手のひらを当てる。(その小さな手は両方ともかすかに震えていた)

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