第6話 火の精霊祭り
今日は何やら朝から騒がしい。
カウンターに行き従業員に話し掛ける。
「今日は何かあるのか」
「お客さん今日は火の精霊祭りですよ」
「お祭りかぁ。どんなお祭りなの」
「都合の悪い物を火の精霊に焼いてもらって浄化するお祭りです」
「えっ、不正の証拠とか燃やすの」
「いえいえ、昔、貰った女房以外のラブレターとかそういうのを燃やします」
「なるほど。捨てたくても捨てられない、人に見せられない物を燃やすのか」
村の広場にはキャンプファイヤーそっくりな木組みが出来て燃え盛っていた。
若い男女が泣きながら木組みの中に燃やす物を投げ入れている。
そんなに悲しいのだったら無理に燃やす必要ないのに。
一際大きな鳴き声がするのでそちらに視線を向けるとリリーちゃんがわんわん泣いていた。
手には傷だらけの絵本を持っている。
絵本なんて取って置けば良いだろうに。
「リリーちゃん、何で泣いているのかな」
「ゴブキンたんが。コブキンたんが」
「あのですね、この絵本は禁書でして」
ロークが代わりに答えてくれた。
「それは物騒だ」
「そんな大げさな物ではなくて、持っていると神官に眉をひそめられる程度なんです」
「どんな内容なんだ?」
「モンスターのゴブキンがある日、女の子に頭を叩かれます。そして、記憶を無くして、やさしいモンスターになって、友達になるという内容です」
魔王はモンスターを率いている。
という事は。
「今、モンスターは人類の敵だから禁書なのか」
「その通りです」
「そうだ、リリーちゃん。お兄さんがその絵本を預かってあげよう。大人になって必要になったら返すから」
「燃やちゃないの」
「ああ、燃やさない」
「本当。指切り出来る?」
「出来るよ」
リリーちゃんと指切りをして本を貰った。
さて、カタログスペック100%はモンスターに効くかな。
がやがやと声が聞こえた。
みるとクラスメイト達だった。
この村ともお別れだな。
俺は宿をチェックアウトして、森へ恐る恐る入る。
ちょうど良い、ゴブリンが一匹いた。
俺は戦闘能力がないから死角からお冷を継ぎ足す技を駆使してモンスターに近づく。
そして、死角から近づき、タッチして。
「カタログスペック100%」
片手には例の絵本があり、ゴブリンは光に包まれた。
掛かったぞ。
「グギャ」
後は頭を殴るだけだ。
ゴブリンは俺に気づき襲い掛かって来た。
森で拾った枝をゴブリンの頭に振り下ろす。
瞬きの瞬間を狙ったので、ゴブリンには攻撃が見えてないから当然、当たる。
「ぐぎゃ」
ゴブリンの血走った目が和らいだように見える。
ゴブリンはきょろきょろと辺りを見回すと俺の言葉を待っている。
成功だ。
頭を叩かないと効力を発揮しないのが難点だが、とりあえずの攻撃手段としては上出来だろう。
リリーちゃんに感謝だ。
モンスターにはやってもらう事がある。
前の時に、女生徒の性奴隷1号が生まれたのが、次の街だ。
阻止しないと。
ここで阻止できるかで今後が変わってくるような気がする。
「ゴブロン。仲間を連れて来てくれ」
ゴブロンと命名されたゴブリンが森の中へ消えた。
しばらくしてゴブリンを1匹連れて戻った。
連れて来られたゴブリンは俺を見ると棍棒を振りかざした。
ゴブロンが連れて来たゴブリンを羽交い絞めにする。
「良くやった。カタログスペック100%。お前はゴブベルだ。この調子でいこう」
味方ゴブリンが2に対して、敵が1になったので、今度はさっきより簡単に済んだ。
増えれば増える程簡単になる。
俺はゴブリンを次々に仲間にしていった。
100匹近くのゴブリンが集まったので、作戦を決行する事にする。
俺達は通称、盗賊街道に陣を張った。
ここは一見、獣道だが、後ろめたい理由のある奴が利用する。
前の時は
ここを奴隷商が通るはずだ。
その檻の中に
彼女を助ける。
彼女には前回の時、大変親切にしてもらった。
恩は返さないと。
3日ほど張り込み遂に奴隷商の馬車が通りかかった。
よし、やるぞ。
俺は顔に布を巻いた。
作戦開始だ。
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