第5話 薬草採取

「今日のギルドの依頼は何かな?」


 俺は立ち寄った村の宿屋で依頼を剥がす。

 ここは、ギルドの出張所を兼ねているからだ。


 依頼は薬草採取しか残ってなかった。

 薬草採取って依頼料が安いんだよな。

 かと言ってモンスター討伐は恐い。

 森もモンスターが恐くて、奥には入れない。


「お願いです。どなたかうちの娘を助けて下さい」


 宿の二階から、20代後半の男が階段を下りて来て言った。

 悲壮な顔つきをしていて、必死に訴えている。


「どうしたんですか」


 宿のカウンターに座っていた従業員が声を掛けた。


「娘が熱を出して医者を呼んだのですが、最上級品質の薬草がないと危ないと言われたのです」

「依頼を出すのなら、そこに張り出します」

「それじゃあ間に合わない。今日中に薬草が欲しい」

「お気の毒ですが、私にはどうしようも。一応依頼を出しますか」

「ええ、お願いします」


 思い出した。

 この男は金づるだ。

 野神のがみが立ち寄ってこの依頼を受けたんだった。

 金を吹っ掛けたのは言うまでもない。


 この男は大きな商会をやっている会頭の息子で、金持ちだ。

 吹っ掛けられたのに娘を救ってもらったと感謝して、野神のがみに支援してた。

 この人に思う所はないが、野神のがみが潤うのは許せない。

 奴は金を遊びに使ってしまうからだ。


 よし、この依頼は俺が受けよう。

 駄目元だ。

 出来なかったら、野神のがみではなく、仲の良かったクラスメイトに受けて貰おう。


 最上級品質の薬草は森の奥に入らないといけない。

 新しく張り出した依頼書に目を通してから、その場を後にした。


 俺は最下級品質の薬草を採るために村の道を行く。


 金物屋の前を通りかかるとテーブルが店の軒先にある。

 テーブルにははさみが沢山置かれていて、テーブルには羊皮紙が張られていた。

 羊皮紙には『これであなたも採取名人、薬草も最上級になる事間違いなし』と書いてある。

 神のお導きって奴か。

 これで宿に泊まっている娘も助かるに違いない。


「すいません、軒先の鋏を買いたいのですが」


 男が店から出て来て応対し始める。


「へい、らっしゃい。ホルダーはどうしやす」

「その前に買った鋏にスキルを掛けたいから、その羊皮紙に触っても良いか」

「へぇ、汚さないのなら」

「じゃあ、はさみを貰うよ。カタログスペック100%」


 手に持ったはさみが光る。

 ホルダーも買って腰に装着した。


 村を出て、森の入口に行く。

 奥の方は暗いな。

 お化けが出て来そうだ。

 不気味な吠え声も聞こえてきた。


 俺が奥に行くかだって?。

 行かないさ。

 俺には無敵の採取用の鋏がある


 森の入り口で、依頼にあった最上級品質の薬草と同じ種類の薬草を探す。

 あった、虫食いだらけの萎びてる薬草だけど、関係ない。


 採取名人でぱちりと切り取ると薬草がみずみずしくなり虫食いも無くなった。

 急いで宿に帰り、真新しい依頼書を手に取る。


「この依頼受けるよ」

「これ森の最奥ですが、よろしいので」

「既に薬草なら持っている。ほら」


 俺は薬草をカウンターに置いた。


「鑑定。凄い奇跡だ。あなたのおかげで一人の命が救われました。こうしちゃ、いられない」


 従業員はカウンターから飛び出し薬草をつかむと凄い勢いで二階に上がって行く。

 ちょっと待ってお金は?

 良いか俺もこの宿に泊まっているし、お金は後でも貰えるだろう。


 翌日。

 昨日の依頼の清算をして、依頼を物色していると、親子が二階から降りてきた。

 男親はこの間の高級品質を依頼した男だった。

 子供は三歳ぐらいの娘さんで、もう良くなったのかと驚いた。

 流石、異世界の薬だな。

 効き目も早い。


 親子は俺の所に来ると。


「あなたが薬草を採って来てくれた人ですね。おかげで助かりました。ロークと言います。ほら、リリーからも、お礼を言いなさい」

「ありがとう、ごちゃいました」


 と言ってもたいした事はしてない。

 スキルをはさみに掛けて、森の入り口でちょっきんしただけだ。

 人助けは気持ち良いし、野神のがみの資金源の一つを潰せた。


「気にしないで良いさ。お金も貰っているし。それにその笑顔で報われたよ。どうしてもと言うなら、これからこの村に来る桜沢さんを支援してやってほしい」


 桜沢さんは女生徒のまとめ役だ。

 前回の時、俺に親切にしてくれた。

 野神のがみの策略に嵌って殺されたが、良い人だった。

 まだ死んでないから、今回は絶対に助けるぞ。

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