第4話 チンピラ冒険者を改心させる

 街の道には露店が沢山出ている。

 その一つの露店で冒険者と思われる奴が暴れていた。


「ツケが駄目だと。俺を馬鹿にしてるのか」


 冒険者が露店の店主の胸倉掴む。


「勘弁して下さい。お代は結構です」

「そうか、悪いな」


 チンピラ冒険者って奴なのか。

 何かギルドに登録するのが嫌になってきた。

 登録だけして、とっとと他の街に逃げる手かな。


 しばらく歩くと、別の冒険者が今度は嫌がる女の子を連れて行こうとしていた。


「やめて下さい」


 女の子が暴れるが、男の力には敵わない。


「ちょっと、来てくれりゃ良いんだ」


 その時、勇気のある通行人が割って入った。


「彼女が嫌がっているじゃないか」

「生、言いやがって」


 冒険者は女の子から手を放した。

 通行人が殴られそうだ。

 助けてやりたい。


「衛兵さん!! 市民が暴漢に襲われてます!!」


 俺は声の限りに叫んだ。

 チンピラ冒険者の隙をついて通行人と女の子が逃げる。


「ちっ、女も逃げやがったか。お前、次に見かけたら殺すからな」


 チンピラ冒険者は俺の方を見て、捨て台詞を吐いて去って行った。


 ギルドの前に別の冒険者がいて、装備が良さそうな先輩にぺこぺこと頭を下げている。


「少ないですが。お納め下さい」


 上位の冒険者に貢いで、上位の冒険者はギルドのお偉方にお金を渡し便宜をはかって貰う。

 全部、想像だけど、そういう構図なのかな。


 二度ある事は三度ある。

 さっきの冒険者が、少年の冒険者に絡み始めた。


「おい、指導してやるから、金を出しな」

「嫌だよ。ただでさえ収入少ないのに」

「ぶん殴るぞ」


 しょうがない、さっきと同じ手でいくか。


「あんな所にちょうど、衛兵さんが! こっちです! 恐喝です!」


 チンピラ冒険者は逃げて行く。

 馬鹿で良かった。

 衛兵が丁度良く来るわけないのに。


 流行の異世界召喚で魔王が現れた訳だろう。

 世界が滅びそうなんだからもっとやる事あるんじゃないか。


 こういう汚い所を野神のがみが見て、無茶苦茶やり始めたんだよな。

 法律など関係ないって。

 ちやほやした貴族も悪いんだけどね。


 ギルドの登録でこの場で読むようにと手渡されたギルド規約を見てピンと来た。


「おねえさん、このギルド規約を売ってよ。予備はあるんでしょう」

「私が売ったって言わないでよ」


 銀貨十枚でギルド規約の書いた羊皮紙を手に入れた。

 腐敗しているから、何でも売ると思っていた。

 ギルド規約の羊皮紙は備品じゃないのか。

 備品を売るなんて、ギルド職員も腐敗しているな。

 だが、今はそれが好都合だ。


 さっそく、見かけたチンピラ冒険者に試してみますか。

 ギルド規約を手に、死角からさりげなく近づきタッチ。


「カタログスペック100%」


 チンピラ冒険者が光る。


「お前、あの時の。金、出せよ」

「嫌だ」

「何しやがった。殴れねぇ」


 チンピラ冒険者は殴る構えのまま微動だにしない。


「規約にね、書いてあるんだよ。ギルド員同士の戦闘禁止って」

「ふざけた事、言ってんじゃねえ」

「そういう奴にはお仕置きだ」

「ぐひゃひゃひゃ。そこ駄目……、うひゃひゃ。……はひーはひー」


 俺は攻撃できないのを良い事に、散々くすぐってやった。


「ギルド規約を破れない体にしたから」

「改心するから、許して」


 人間にスキルが効くか自信が無かったけど、上手くいったな。


 実は俺にはしょうもない特技がある。

 それが、客が気づかない内に、お冷を継ぎ足すというものだ。

 喫茶店のバイトで身につけた。

 この特技をもってすれば、スキルを掛けるなんて造作も無い。


 ギルドで冒険者を待ち伏せしてスキルを掛けてやった。

 もうスキルを掛けてない冒険者は殆んどいないはずだ。


 もう、こうなりゃ毒皿だ。


 ギルド規約を売ったお姉さんに俺は話し掛けた。


「ギルド職員規約もあるんでしょ。売ってよ」

「売った事を言わないでよね」


 俺はギルド職員規約を手に入れた。


「お姉さん、カタログスペック100%」

「何をしたの?」

「規約を破れなくしただけ。腐敗を追放したいから協力して」

「あれ、断れない」

「ギルド職員を連れてくれば良いから」


 冒険者に引き続き、ギルド職員も片っ端からスキルを使い、まともにしてやった。

 妙に居心地が良くなったギルドで薬草採取を何日かこなしていたら。


「へぇ、これがギルドか」

「はしゃがない、はしゃがない」

「冒険者王に俺はなる」

「来訪者様方、登録しますから、並んで下さい」


 クラスメイトが騎士に連れられぞろぞろと入って来た。

 今の俺の状況ではまだ野神のがみに仕返しは出来そうにない。

 野神のがみに見つかったらやばそうだ。

 なら、こそっと隣町まで脱出する手だな。

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