2日目-1

 ユメちゃんが起きる前におもちゃ箱から出る。静かに蓋を閉めると、広い部屋を見回した。昨日はなんとも思わなかったけれど、中央に椅子がない部屋は、なんだかとても広く感じた。

 眠っているユメちゃんを覗き込む。今も楽しい夢を見ているのか、ユメちゃんは「えへへ」と小さく笑った。

 床に座り込んでベッドにもたれかかる。ママさんとパパさんが仕事に行った音が聞こえたのは結構前だから、夜までドアが開くことはない。

「……」

 みんなの声が聞こえない。時々聞こえるのは、夢の中のユメちゃんの声だけ。こんなに静かだと、世界に放り出されたみたいだ。

「……」

 立ち上がって本棚の前に立つ。字は読めないから、綺麗だと思った色の背表紙で本を選んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る