1日目-2

「夢見子、なにか良いことあった?」

 パパに言われて、ユメはびっくりしてもぐもぐしていた肉団子をごっくんと飲んでしまった。

「なんでっ?」

 ユメの言葉に、パパはママと顔を見合わせて「だって」と笑った。

「夢見子、ご機嫌みたいだから」

「んー」

 隠しきれてないことに心がむずむずした。なんとなくパスタをくるくる巻いてみるけど、心のむずむずはなくならない。

 どうしたらむずむずしなくなるのか、ちゃんと分かってる。でも、言わない。言っちゃ駄目って、約束した。

「ひみつっ」

 そう言ったユメに、ママとパパはまた顔を見合わせて笑った。


 ――「ボクのことは、ママさんとパパさんには内緒だよ」


 ユメが帰ってきたパパに「おかえりなさい」って言おうと部屋から出ようとしたら、ウサくんはそう言った。

「なんで? ユメ、ウサくんのことパパにもママにもいいたい」

「ボクはユメちゃんだけのトモダチなんだ。だから他の人にボクのことがばれちゃったら、ボクはもうユメちゃんに会えなくなっちゃう」

 ウサくんはすごく悲しそうなお顔だった。だから、よく分かんないけど「うん」って言ったら、ウサくんはクロウサさんを抱っこしたままユメをぎゅってした。

「ごめんね、隠しごとさせて」

「ううん? ユメは、かなしくないよ?」

 だから「ごめんね」はやだよ?――そう言おうとしたのに、ウサくんのお顔はやっぱり悲しそうで、ユメはなにも言えなくなっちゃった。


 ――「ボクとキミは秘密のトモダチだよ。キミの部屋の中でだけ会える、内緒のトモダチ」


「夢見子?」

「!」

 ママに呼ばれて顔を見ると、ママが不思議そうにユメを見ていた。

「ママ? どうしたの?」

「ママが訊きたいわよ」

 ママが笑いながら、ユメのお皿を指差す。見てみると、ユメがくるくるしてたフォークに肉団子よりもっと大きいパスタのお団子がくっついていた。

「あれっ?」

 パスタが全部お団子になっちゃった。

 重たいパスタお団子を一口食べてみる。お団子じゃないパスタと同じ、トマトさんの味がした。

「もう、なにしてるの」

 ママが笑いながらティッシュでユメのお口を拭いてくれた。パパもそんなユメとママを笑いながら見てる。

「――」

 もしかして、って、思った。

 もしかしたら、ユメが頑張らない方が、ママもパパもユメと一緒にいてくれるかもしれない。

 そう思って――ママとパパに笑った。

「ごめんなさい」

 お仕事を頑張ってるママとパパにそんなことを思っちゃうユメは、やっぱり悪い子だ。

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