0日目-2
ご飯に呼ばれて行くと、パパとママがもう座ってユメを待ってくれていた。
「わーい! おむらいすだーっ」
急いで椅子に座ると、ママがにやにやとユメを見た。
「どうしたの?」
「ううん。さ、食べよっか」
「うん! いただきまーす!」
手を合わせて、オムライスをスプーンですくう。いつもよりしっかりしてる玉子のお布団で、ユメはママの顔の理由に気付いて、思わず笑いながら食べた。
「ふーむ」
もぐもぐ食べながら、正面に座ってるパパを見る。パパは悪戯したユメを見つけた時みたいに笑っていた。横に座ってるママをちらっと見ると、ママはそわそわしながらじっとユメを見ていた。
ごっくん。飲み込むと、ユメは本で読んだ名探偵みたいにママを指差した。
「このおむらいすをつくったのは、ママですねっ」
「あちゃーバレちゃった」
ママが残念そうに笑いながらオムライスを食べ始めた。もぐもぐしながら、「味付けはパパと同じはずなんだけどなー」と首を傾げた。
「ママがパパレベルになるのは、まだまだ先かな?」
パパも食べ始めながら、ユメとママに笑った。
ユメは「えっへん」と胸を張った。
「ママがどんなにがんばっても、ユメはどっちがつくったか、ぜったいわかるもーん」
「あら生意気。夢見子が間違えたらいっぱい笑っちゃお」
「まちがえないもーん」
「言ったわねー?」
「ふーんっ」
「こらこら、落ち着いて食べようよ」
パパに言われて、ユメとママは顔を見合わせて、笑った。
「パパみたいなふわふわたまごじゃないけど、すっごくおいしい!」
「『パパみたいじゃない』は余計でしょ」
ママにぴんっと鼻先を弾かれる。「むー」と鼻を押さえると、ママは嬉しそうに笑った。
パパが「それで、」とユメに笑った。
「今日の学校も楽しかった?」
「……、うん!」
ユメも笑うと、今日のことを思い出しながらパパとママに言った。
「こくごのじかんにね、『ななせさんはおんどくがじょうずですね』ってほめられちゃった! さんすうはしょうてすとがあったよ! それと、がっこうのなかにわで、いろんなおはなをかんさつしたよ! “たいく”はなわとびだった! そうそう、かんじのてすとはまんてんだったよ!」
「そっかそっか。楽しいことばかりで良かった」
パパがにこにこ笑う。ママがユメに言った。
「休み時間はなにしてた? 好きな男の子の話とかする?」
「……、がっこうのおはなしとか、てれびのおはなししてるよ! ユメ、ぜんぜんてれびみないから、いろんなおはなしきけてたのしいよ!」
ママが「そっか」と嬉しそうに笑う。ユメは「それより」と話を変えた。
「きょうよんだおはなしにね、ねことねっこがでてきたんだよ! ちょっとちがうだけなのに、すごくかわるのって、おもしろいよね!」
「橋と箸みたいなのも面白いよね」
「『カキが好き』って言われると『どっちの?』って思ったりするわよね」
「結局、柿でも牡蠣でもなかったり」
パパとママが楽しそうに「あるある」と笑う。そんな二人の笑顔を見て、ユメも笑った。
だいじょうぶだよ、パパ、ママ。ユメはがっこう、ちゃんとたのしいよ――心の中で言った言葉がちゃんと口に出ているのか、ユメには分からなかった。
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