第54話

 木の中に入ったはずなのに、そこには鬱蒼と植物が生い茂っていた。

 さまざまな高さの草をかき分けながら歩く。


「きゃん」

 テンがとても歩きにくそうにしてるなと思ったら、大きくなった。


 ところどころで、しゃがみ込んで草を摘んでいる子どもたちがいる。よく見ると薬草事典で見たことあるような薬草が生えていた。この階にいるモンスターは襲ってこないようだ。


 しばらく歩くと、階段があった。そのまま進んでいくことにした。

 2階は。木でできている通路があり途中に部屋があるようだ。私たちは慎重に歩くことにした。すると、目の前にカマキリのモンスターが現れた。カマキリのモンスターはやる気満々という風体で構えている。


「テン!雷!」

「きゃん!」

「風!」

 わたしがテンに指令を出し、アルも魔法を使う。アルはまだ初級魔法でも何かきっかけが必要らしい。


「ハッ!」


 テンの雷で痺れ、瀕死となったモンスターを風魔法で切り裂いたあと、撃ち漏らしをアルが剣でトドメを刺す。

 カマキリのモンスターたちは、黄緑色の結晶を残して消えていった。

 わたしたちの家の近くのダンジョンよりもモンスターが強い気がする。気合いを入れて挑もう。

 またしばらく歩くと今度はミミズのモンスターが現れた。うっ…苦手だ。


「テン!風!」

「きゃん!」


 テンの風の刃で、ミミズのモンスターを切り裂く。千切ることは無理だった。やっぱり強い。


「テン!風!」

「きゃん!」

「乾!」


 わたしは乾燥魔法を重ねる。ここでは火魔法は使えないので、風魔法の乾で代用だ。ミミズのモンスターは干からびて動きが鈍くなった。

 鈍くなっているのに、攻撃を仕掛けてきた。


「風の盾!」

「ハア!」


 アルが剣で薙ぎ払う。まだまだ剣の方が使いやすいみたいだ。


 ミミズのモンスターは茶色の素材を残して消えた。


 ミミズのモンスターのいなくなったところに木でできた箱が現れた。触っていいのかわからないので、剣先でつつく。木の箱はころっと転げたか拍子に開いた


「これ何かな??」


 中には、ジュースが瓶に入っていた。丁寧にラベル付きだ。ラベルには世界樹の実ジュースと書いてある。


「飲む?」


 テンが鼻先を近づけてふんふんと嗅いでいる。


「うーん。リア、鑑定は?使えないのか?」

「忘れてたよ。まだ使えない。」

「きゃん!」

「え、開けるの?」

「きゃん!」


 テンが開けろというので、開けるとテンが匂いを嗅ぐ。


「きゃん!」


 テンが鳴くと水魔法が発動し、瓶を包む。水に流されないかなも思ったがその調整はできるようだ。


「きゃん!」

「美味しいの?」

「きゃん!」

「てか、テン鑑定できるの?」

「きゃん!」

「あ、レンが教えてくれたんだ。」

「使い魔ってそんな特技があるのか。」

「水系魔物だけだって聞いてたんだけど、教えられるものだったみたい。」

「へー。面白いな。」

「ねー。」


 わたしたちは、せっかくもらったのでジュースを分けて飲んでから進むことにした。


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