第53話

 丸太ブランコが激しく前後に揺れる。その度に上に乗った子どもたちが落ちていくが、落下する前にブランコから伸びた蔦が子どもたちをしゅるっと絡めとっていく。


「きゃー」

「きゅー」


 わたしとテンは声を上げた。アルも頑張ってしがみついているようだ。

 私のウエストポーチの中からテンがするっと飛び出した。


「テン!!!」

「きゃん」

 テンがとっさに浮遊魔法を唱えた。そんなテンを蔦が絡めとって地面に下ろしている。


 わたしも、テンに手を伸ばしたと同時にバランスを崩して、そのまま蔦に絡められて地面に下ろされた。


「テン!」

「きゃん」


 わたしたちはお互いに駆け寄った。わたしはテンを抱き上げる。いつもより毛が膨らんでいるが異常はないようだ。テンの毛皮をふわふわして心を落ち着ける。しばらく、そのまま丸太のブランコを見つめているとブランコは動きを止めた。

 アルは最後まで残っていたようだ。最後まで残っていた子どもたちとアルに世界樹の実が配られている。昨日や今日にもらった実よりも少し大きいようだ。


「これは?」

「世界樹の実だよ。最後まで落ちなかったらもらえるんだ。」


 ここに連れてきてくれた男の子が教えてくれた。


「そうなんだ。」

「広場の中心の世界樹の実より高い場所になっている実らしいよ。」

「よく知ってるね。」

「俺の父ちゃん、入り口の案内人だから。」

「そうなんだ。ダンジョンの中に入りたいんだけど、どうしたらいい?」

「あ、お姉ちゃんたちダンジョンに行きたかったの?」

「うん。」

「ダンジョンの入口はこっちだよ。」


 男の子が案内してくれるようだ。


「ダンジョンの中は火気厳禁だからね。火を使うと中にいるモンスターが怒って大暴走してくるから気を付けてね。」

「うん。ありがとう」


 男の子が入口まで案内してくれたのでお礼を言って別れた。

 ダンジョンの入口は木のトンネルでできていた。今から迷路に入るのかと思っていたが、迷路は突破したら世界樹の実がもらえるだけで入口ではないらしい。木のトンネルを抜けると。最初に見た背の高い大きな木のうろがあって、そこに看板と矢印があった。ここから入るようだ。


 わたしは抱き上げていたテンを下ろし、大きな木の中へと向かった。




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