第52話

 次の日、私は朝からアルを誘って世界樹の実を食べに行く。精霊魔法を使える方がいいと思ったからだ。世界樹はテンの分まで実をくれるので今日も一緒に食べる。


「アル、今日から人探し?だね。」


 私たちは手分けしてダンジョンに行くことになっている。


「ああ。俺たちは覚醒のダンジョンだな。」

「うん。覚醒のダンジョンにいてくれたらいいんだけどね。」

「ああ。」


 世界樹の実を食べ終わり、私たちは宿へと戻った。


「リア、アル、私たちそろそろ出るけど、あなたたちは?」

「わたしたちも出るよ。」

「そう気を付けてね。」


 お母さんがわたしの頭を撫でる。


「アル、あなたもね。」


 お母さんがアルに近づき、アルの頭も撫でた。


 ちょっと照れちゃうな。


 私たちは、覚醒のダンジョンへ向かうべく、冒険服に着替え出発した。

 覚醒のダンジョンは世界樹から一番近くにあるダンジョンだ。お腹が空いたら世界樹の実が食べられる冒険者にとても優しいダンジョンらしい。どんなところか興味津々だ。


 覚醒のダンジョンついた。私たちより小さなエルフの子供たちがダンジョンの中に入っていく。


「え?ここ?」


 そこはダンジョンというより、公園のようだった。


 エルフの子どもたちは、ダンジョンの広場部分にある木と木の蔓でできたブランコや、気でできた滑り台。大きめの木から蔦によって網目に編まれたジャングルジムなどがあった。


 真ん中には、大きな木がそびえたっている。その周りには生垣でできた迷路が作られており、ところどこと障害物があるのかアスレチックになっているのがわかる。


 迷路の入口へ行くには大きな池を木の蔓に捕まって渡らなくてはならないが、失敗すると、意志を持っているかのような木の蔓が失敗した挑戦者たちを巻き取ってひっっぱり上げていく。

 もう、ダンジョンというより植物という子守のいる遊技場のように見えてきた。


 そりゃ、私たちだけで行ってこいとなるよね。


 わたしたちは、呆気にとられ広場の入口付近で立ち止まってしまった。


「なあ、ここ初めてか?」

「え、あ、うん。」


 生粋のエルフに見える私たちよりいくつか年下の男の子に話しかけられた。


「じゃあ、あっち行こうぜ!みんなここから始めるんだ。」

「え、あ、あの、」


 その男の子と一緒に来ていた子どもたちに引っ張られとても大きな丸太を吊るしたブランコのようなものに連れてこられた。


「おねえちゃん、その子なに?かわいい。」


 ウェストポーチに入っていたテンにブランコ場にいた女の子が興味を持ち近づいてくる。


「テンっていうの。私の使い魔なんだ。」

「そうなんだ。お姉さん魔物つかいなの?」

「うん。魔物つかい。この子は雷風狼っていう種類なんだよ。」

「きゃん」


 テンが身を乗り出し、その子の顔をペロリとなめた。


「ふわふわ」

「可愛い」

 女の子たちが集まってくる。


「おい、みんな何してるんだよ。はやく乗れよ。」

「あ、お姉さんも行こう。テンちゃんも!」


 女の子たちが手を引いてくれてブランコの前までちかづいた。すると、ブランコの上の方から、蔓が伸びてきて、私たちをブランコの上にそっと乗せていく。


「いっくぞー」


 さっきの男の子の声で丸太ブランコは前後へと揺れだした。

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