第46話
黙々と素材の良さを上げる錬金をこなす。何回も錬金を繰り返していくとどんどん失敗しなくなってくる。
10回で区切って10回とも成功するまでは1番価値の低い素材で挑戦し続ける。
やっと10回全て成功したがどっと疲れていた。
「ここまでにして、毎朝繰り返すのよ」
「はーい」
私たちは錬金窯をバングルに戻した。
「お母さん、錬金術1の祠って、錬金窯の時より魔力必要??」
「ええ。そうね。錬金窯でギリギリだった?」
「うん。ギリギリだったよね。」
「おう。俺も。」
「きゃん」
「そう。じゃあ、お父さんたちとダンジョンに行ってレベル上げしてきたらどうかしら?明日帰ってくるから、明後日から行ったらどう??」
「うん!」
「おう!」
「きゃん!」
「ふふ。とりあえずもう少し休憩しなさい。」
私たちはしばらくゆっくりして過ごした。テンの毛をブラッシングしたり、肉球に軟膏を塗り込んだりしていると、誰かが来たようだ。
「すみません。アンナさんいますか?」
「はい。」
お母さんが玄関へ向かう。来客なんて珍しいなあ。
「誰かなー?」
「てか客なんてくるんだな。」
「魔道具のお客さんとか?」
「家まで?」
「それはないか」
わたしは軟骨を塗り終わったテンの肉球をもみもみしながらアルと話していた。
「こちらへどうぞ。」
お母さんがお客さんを案内して部屋の中へ入ってきた。
メガネをかけてスーツを着ている人だ。汗をかいている。何か焦っているのかな?
「急にすみません。うちの若様がこのような書き置きを残して家出をしてしまいまして。」
と言って、男の人が紙切れを取り出した。
それを見たお母さんはため息をついた。
「はあ。リア、アル、いらっしゃい。一緒に話を聞きましょう。」
わたしとアルは顔を見合わした。なんだろう。不思議に思いながら、わたしたちはダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。
ー嫁を探しにエルフの国へ行く。心配するな。ー
…嫁?
「お母さん、エルフの国って近いの?」
「遠いけど、行こうと思えばすぐ着くわ。」
「転移陣?」
「そうだけど、特殊な転移陣よ。そちらの若君は腕に覚えがおありで?」
「はい。次期魔法剣士団長候補だと言われております。」
「この嫁というのは?」
「若の幼馴染の君がエルフでして、本人たちは結婚の約束をしていたのですが、まだ儀式はしておりません。」
「あら、なぜ?」
「まだ年齢が足りませんので。」
「いくつなの?」
「11歳でございます。」
私たちと一緒だ。
「できれば、エルフの国へ行ってもらって、若や姫と交流していただければと思っております。」
「なんで?」
疑問だ。なぜ、わざわざこんなお願いに来るのだろう。
「若は15歳になると、エルフの婚約のダンジョンへ参るでしょう。その時若の助けになっていただきたいのです。無理にとは申しません。知り合って仲良くなり助けてもいいと思った場合の話でございます。」
旅の仲間探し?
「その若さんは魔法使いじゃないの?」
「魔法使いではございますが、剣術も修行しており、騎士としても十分な実力を持っております。」
「ふうん。アルはどう思う?」
「会ってみるだけならいいけどな。」
「そうだね。仲良くなれる約束なんてできないし、助ける約束なんてもっとできないけどね。」
「そうだな。エルフの国に興味はある。」
「2人の考えはわかったわ。明日、家族で話し合ったあと連絡してもよろしいですか?」
「はい。わかりました。」
そう言って頭を下げて、執事さんは帰っていった。
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