第37話

 3階のドアを開ける。中には透き通った石があった。洗礼の時に触ったのと似ている。

 看板がある。


 ー飛行魔法の石ー


「先に触っていい?」

「おう。」

 アルが快く譲ってくれたのでわたしは石に触れる。


 ピカッ

 石が青白く光った。言葉が頭に浮かぶ。


「風!飛!」


 唱えてみると体がふわっと浮かんだ。


 ピカッ


「え?」


 光ったタイミングでテンがウェストポーチから出た。


「きゃん!きゃん!」


 テンもふわっと浮かぶ。あれ?テンも今飛行魔法手に入れたの??


「テン!」

「きゃん!」

 テンを呼ぶと飛びながら近づいてきた。


「テン、すごいね!」

「きゃん」

 そんなことないよー。って飛べる種族なのかな??違うはずなのだけど…お父さんに聞いてみよう。


 2人で周りを飛んでまわる。室内を一周したぐらいの時に、


 ピカッ


 アルも石を触っていた。


「風!飛!」


 アルもふわっと浮いて飛び上がった。


「これいいな!」

「ね!楽しいよね!」

「きゃんきゃん!」


 しばらく飛んで満足したあと、出口へと向かう。


 出口に行くと、飛行ルールというパンフレットがあったので持って帰ることにする。

 飛行魔法は私用で使うのは自由だが、仕事だ使う場合は魔法学園で講習を受ける必要があることや、物にかけるときの注意点などがある。物にかけるときは触れていないとダメらしい。


 祠を出て宿に向かう。

 テンはさっそくふわふわと飛んで移動している。もともと風の属性をもっているから楽に飛べるのかな。ということはテンと契約してるわたしもかな?やったー!

 ふわふわとなびくテンの毛を見ていると抱っこしたくなった。


「テン!おいで!」

「きゃん!」


 名前を呼んで腕を広げると、飛び込んできてくれた。もう!可愛いなあ!

 残りの道は背中の毛をふわふわと撫でながら歩いた。


「ただいま」

「おかえり」

 宿にはお母さんだけがいた。

「うまくいった?」

「うん!わたしたちみんな飛べるようになったよ。」

「みんな?」

「うん!」

「2人じゃなく?」

「テンもだよ。」

「え?」 

「テン、飛んで見せてあげて」

 と言って抱き締めていた腕をゆるめる。


「きゃん!きゃん!」


 テンがふわっと浮き上がる。ふわふわの妖精みたい。


「ちょっと!何があったの?」

「普通に攻略して触っただけだよ。」

「え?そういうものなのかしら?」

「どうだろ?テンが触ったら、わたしと一緒でピカッとひかって飛べるようになったんだよ。」

「そうなの…」

「きゃん!」

「飛びたかったから触ってみたんだって。」

「魔物使いと魔法使いのダブルスキルが珍しいから聞いたことないのかしらね?」

「どうかな?」


 テンが努力家だからだと思うけどな。

 それからお父さんたちが帰ってくるまでは飛行魔法の練習をしながらゆっくり過ごした。


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