第35話

「おはよう。」

「おはよう。」「きゃん」


 朝起きてリビングにいるとアルはもう起きていた。

 早起きだなあ。

 今日は飛行魔法の祠へ行く。どんなところなのかな。


 お父さんとおじさんは、近くのダンジョンに出稼ぎで、お母さんは魔法使いの里の学園に夏期講習の講師だって。みんな忙しいな。


 朝ごはんを食べてアルと地図を見ながら祠へ向かう。

 飛行魔法の祠は小さな祠だった。難易度1と書かれてある。受付に人はいなくて、緊急時には押してくださいとボタンが置いてあった。


 ピッと改札にバングルをかざす。改札の先にはドアがある。テンはウェストポーチに入れたままにしておいた。

 ドアを開けて入れってことかな?アルと目を合わせる。アルがドアへ向かう。


 カチャ

 普通にドアが開いたので中に入った。


「え?」


 中に入ると体がとても軽く感じる。一歩歩いただけなのに飛び跳ねたようになっている。

 ぽんっぽんっと跳ねながら前に進む。


 目の前にバッタのモンスターが現れた。


「えい!」

 とりあえず火の初級魔法で攻撃してみる。普通のダンジョンのモンスターと変わらないみたいだ。


「とりあえず倒すか。」

「うん。テン、出ておいで。」

「きゃん」

 テンがふわっと出てきた。

 いつもよりも軽やかだ。でも歩きづらいみたい。


「きゅう」


 テンが足に魔力を込め出した。

 そうすると無駄に飛び跳ねることはなくなったみたいだ。


「テン!賢いね!偉い!」


 わたしもテンを真似して歩き出す。さっきより楽に歩けるようになった。


「今、何したんだ?」

「足に魔力を込めて歩くの。普段木に飛び移るときの逆だね!」

「魔物つかいの技かよ!」

「でも風魔法だよ。風魔法で下から持ち上げてたんだけど、今度は風魔法で下に抑えるの。」

「やってみる。」


 アルはまだ魔法に慣れていないので、たまにジャンプしちゃったり、逆に足が持ち上がらなかったりするが段々と歩けるようになってきている。

 アルが慣れるまでモンスターは私たちが引き受けることにした。


 今度はカブトムシモンスターだ。


「テン!雷!」

「きゃん!」


 テンの雷がツノに当たる。痺れて動けなくなったと思ったら素材になった。


 迷路のような道を進んでいく。特に問題なく二階への階段を見つけた。透明なドアがあるので開ける。

 入ると、体が沈む。危ない。風魔法を解除した。


「どわっ」

 アルが変な声を出して、階段に躓いた。


「大丈夫??」「きゃん?」


 テンがアルの顔をペロンって舐めた。


「大丈夫。急に感覚が変わったから調整できなかった。」

「そっか。ん。」

「ありがとう。」


 アルに手を差し出して、起きるのを手伝う。


「うん。わたし前行くね。」

「そうだな。入ったときの調整はリアのが早いしな。よろしく。でもすぐ変わるから。」


 2階は連携が必要かもしれないが、わたしが前衛をすることにした。普段あんまりしないからうまくできるかちょっと不安だ。2階の状況が分かれば変わってもらおう。

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