第29話

 朝、起きてリビングへ行くと、知らないおじさんがいた。


「おはよう。」

「おはようございます。」

「きゃん?」

 テンが誰?っと言っているが、わたしにもわからない。


「レオンのお父さんよ。」

「・・・領主さま?」

「今日はお忍びだから気にしないでいいよ。」


 領主さまは細身の背が高い人だ。レオンとは髪の色だけ同じだ。


「レオンが世話になったね。昨日の襲撃も君とその子が守ってくれたらしいじゃないか。」

「いえ、私たちは防御をしただけで。」


 うう。領主さまなんかとどう話せばいいのかわからないよ。お母さんはすごくめんどくさそうな顔をしている。領主さまの前だよ!隠して!


「リア、朝ごはん食べておいで。」

「うん。」


 お父さんに促されて朝ごはんを食べる。領主さまはちょうど来たところだったみたいだ。レオンの寝ている部屋へ行った。


 テンの朝ごはんを用意し、テンにあげる。今日も嬉しそうにガツガツ食べてる。いっぱい食べて大きくおなり。ここ数年大きさ変わらないけど。まあ、かわいいからいいか。

 自分の朝ごはんも食べ終わったころ、レオンが台所へ来た。



「レオン、おはよう。今日学校行くの?」

「うん。みんなに挨拶したいからね。」

「そっか。みんなさみしがるよ。」

「僕、初めての学校だったんだ。楽しかったよ。」

「ふふ。よかった。」


 レオンの髪の色は茶色に戻っている。


「領主さまと二人で帰るの?」

「街の外に騎士を待たせているそうだよ。」

「そっか。それなら安全だね。」

「うん。」


 私たちは学校へ行く用意をして学校へ出発した。領主さまはさすがにお留守番だ。


「テン!行くよ!」

「きゃん!」

「行ってきます。」「きゃん」「ウォン」

「いってらっしゃい」


 今日は念のためレンも送ってくれるらしい。昨日の今日だし、捕まったとはいえ不安だったので嬉しい。安心する。


「よう。」


 家を出るとアルがいた。レオンが普段使っている鞄を持ってきて渡している。


「アル、おはよう。おじさんは?」

「おはよう、ありがとう。」

「ちょっと、警備隊の事務所寄ってから学校に行くって先に出たよ。」

「そっか。」


 昨日の襲撃のことは怖がるといけないからユラとマヤには言わないことにした。


「おはよう。」

「おはよう。僕帰ることになったんだ。」

「そっか。よかったね。」

 マヤが言った。

「寂しくなるね。」

 ユラが言う。

「ありがとう。学校楽しかったよ。またこっちに遊びに来るからその時は一緒に遊んでくれる?」

「うん!もちろんだよ!」

「うん!遊ぼう!」


 レオンは多分この二人に挨拶をしたかったんだろう。学校へ向かいながら楽しかったあれこれを話す。やっぱりちょっと寂しいな。

 校門の前でおじさんが待っていた。おじさんとレオンは職員室へ向かう。私たちは教室だ。


「あーあ。レオン帰っちゃうんだね。」

 ユラが残念そうに言った。

「寂しいけど、レオンのためには帰った方がいいんだよ。」

 マヤが言っている。

「ねえ!マナー講座受けない?」

 ユラがいいこと思いついたという顔をしている。


「マナー講座?」

「ほかのお貴族様に会っても大丈夫なように。」

「それいいね!レオンとどこで会っても挨拶できるよね。」

「リアも受けよ!」

「う、うん。」


 マナー講座って挨拶とかの?あれ、ちょっとだけお母さんに習ったんだけど向いてないんだよね。


「アルもどう?」


 ユラが誘っている。アルも嫌いだったはずだ。


「うーん。考えとく。」


 あ、逃げる気だ。逃げれるかな・・・



 教室のそれぞれの座席に着く。先生はまたちょっと遅れてやってきた。


「レオンくんが転校することになりました。」

「えー!!!」


 そうだよね。びっくりするよね。


「皆さん、短い間でしたが仲良くしてくれてありがとうございました。ここでの生活は僕にとってとても大切な思い出です。また、いつかお会いしましょう。」


 挨拶のあと、すこしレオンと話す時間が取られた。みんな、口々に別れを告げている。

 その時間が終わると、レオンは帰っていった。迎えはお父さんだった。





 学校を終えて家に帰ったらレオンはもういなかった。私たちには手紙が一通ずつ残されていた。お礼の手紙だ。今までの思い出が書かれていて、最後に冒険者になったら一緒に旅に出ようと書かれていた。


「ん?何か入ってる。」

 指輪が三つだ。それそれ宝石がついていて石をずらすと紋章が刻まれていた。

 ピンクのが、私、黄色がユラ、赤がマヤのだそうだ。

 左手の小指にはめてねと書かれている。

 もう一つ、テン用の大きさが変えられるわっかがあった。つけるところは任せるようだ。


「あ、それ、レオンが手に入れた素材でわたしが作ったの。お礼だって。何かあったら力になるって言ってたよ。」

 お母さんが教えてくれた。


「そっか。」


 アルも黒色の石がついた指輪を手にしている。

 私たちは目を合わせて左手の小指に指輪をはめた。



______________________________________


 ご愛読ありがとうございました。魔物使いリアはシリーズ化する予定です。次回作もよろしくお願いします。


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