第16話

 さあ、今日は試験の日だ。忘れ物がないか確認する。


「行ってきます。」「きゃん」

「行ってらっしゃい。頑張ってね」

「いってらっしゃい。自信もってな」

「ウォン」


 家族総出でのお見送りだ。やっぱりレンは会場まで送ってくれるらしい。


「「行ってきます。」」

「いってらっしゃい」


 アルとレオンも出てきた。


「おはよう」

「おう」「おはよう」

「緊張するね。」

「そうだね。」

 レオンが答えてくれた。

「アルは?緊張しないの?」

「緊張することあるか?」

「え?」

「いつもやってることをするだけだぞ」


 それもそうか。・・・


「理屈じゃないんだよ!」


 それでもちょっと緊張がマシになった気がする。


 試験会場に着いた。ダンジョンのある街で月に一回行われる。ダンジョンのないところからの人も来ている。見たところ、私たちが最年少なようだ。20人ぐらいかな?


 まず、学科試験を受ける。

 テンも隣の席に座ったが、机の上に鼻の半分上からしか出ていない。試験はマークシートなので、爪で印をつけるそうだ。

「テン、字読めるの?」

「きゃん」

「え、どうやって?」

「きゃん」

 レンに習ったそうだ。


「はじめ」


 試験が始まる。意外と簡単な問題ばかりで安心する。よかった。


 学科が終わると実技だ。

 名前を呼ばれるまで待機する。


「アル」

「はい」

 アルが最初に呼ばれた。


「リアとテン」

「はい」「きゃん」


 試験会場に入ると試験官が3人が机に座っていた。

「名前を教えてください。」

「リアです。この子はテンです。」


 テンは横でお座りしている。


「じゃあ、まず魔物つかいとしての実力を見せてもらいます。あの的に攻撃してください。」

「はい」


「テン、ライ!」

「きゃん」

 的は焼け焦げた。


「次はあちらです。動きます。」

「テン!フウ!」

「きゃん!」

 動く的も風で切り裂く。


 あれ?威力上がってる気がする。


「連携は問題なさそうですね。じゃあ、個別に試験をします。まず、リアさん」

「はい」


 1人のおじさんが出てきた。

「この人を相手に2分間戦い続けられたら合格です。あなたは魔物つかいなので、通常より1分短くなっています。あなたはどんな攻撃をしてもかまいません。それでははじめ」


 おじさんが剣を抜く。私も剣を構える。訓練していてよかった。

コウ!」

「え、うわ!」


 おじさんに目くらましの魔法を使う。

「え、魔法?」

「あ、この子サブスキル持ちですよ。」

「本当だ。珍しい。」

「最近、たまにいますよね。」


 試験官たちが話しているのが聞こえる。


「やあ!」


 私はおじさんに切りかかりにいく。でもさすが試験官だ。目がくらんでいるので、大きく下がって距離を取られた。切りかかる隙が無い。じりじりとした時間をすごす。魔法を使い隙を作ろうとするがなかなかできない。距離が開いてしまった。


「はい!やめ!」

「ありがとうございました。」


「あなた、よく訓練していますね。この調子で頑張ってください。」

「ありがとうございます。」


 おじさんが近付いてきた。

「君は2分耐えるだけでよかったのに、全然攻撃させてもらえなかったよ。」

 あはははと笑いながらおじさんは去って行った。


「次はテンさん。前へ。」

「きゃん」


 自分の時よりドキドキする。


 馬系の魔物が出てきた。

「3分間戦いづづけれれば合格です。どんな技をつかってもかまいません。はじめ!」


 ぶわっとテンの体が大きくなる。今はベージュ色のサモエドのようだ。犬に例えたら怒られるけど。


「ふむ、巨大化可能。」

「先ほど二属性使えましたね。」


 試験官の声が聞こえる。でもわたしはテンから目を話すことができない。


「きゃん!」

 ビリビリビリ!

「グルルル」

 雷を間一髪避けたが尻尾の先が少し焦げたようだ。


「ヒヒーン」


 相手の属性は炎のようだ。テンに炎が襲い掛かる。


「きゃんきゃん!」


 テンが目の前に水の盾を張った。


「え、三属性め?」


 テンは変だからな。と思って見ている。相手の馬もびっくりしたようだ。あの子いつの間に盾の練習したのかな。


 しばらくして、水の盾と炎が消えた。


「がうぅ!」

 テンが爪で馬に襲い掛かる。


「そこまで!」


 しゅるしゅるとテンが小さくなった。こっちに急いで戻ってくる。よく頑張ったねと心でいいながら撫でている。

 ドアが開いて、秘書みたいな人が紙を2枚持ってきて試験官に渡す。

「二名とも合格です。」

「やったあ。ありがとうございます。」「きゃん」


「それで少し聞いてもいいかね?」

 さっきの馬を撫でている試験官が言う。この人が魔物つかいなのだろう。

「はい。」

「その子、雷風狼とあるが、水も使えるのか?」

「私もここまで使えるとは思ってなかったのですが、私の父の使い魔と水魔法の練習をしてました。」

「なるほど。親代わりの属性も使える。ということか。面白い。参考になったよありがとう。」

「いえ、ありがとうございました。」


 そうして私は退出した。

 アルもまだのようだ。待合室で待つことにする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る