第12話

 汗だくでぼろぼろな2人が台所に行くと、お父さんがご飯を作っていた。


「久しぶりに真剣にやったのか?」

 水を入れて私たちに渡してくれる。

 それを一気に飲み干す。おいしい。


「こいつ、剣術サボってる!」

「サボってるんじゃなくて他に一生懸命なんだもん!」

「一緒だろ!」

「アルがいなきゃあんまりやらないもん!」

「俺のせいかよ!」

「そうだよ!」


 前みたいに毎日一緒にしてくれなくなったくせにサボってるとか言わないでよ。


「そうだよってお前…」

 アルが絶句している。

 わたしはプイッとレンにくっついて、テンの体をもふもふともむ。

 テンがわたしの顔を舐める。


「まあまあ、じゃあこれから週2ぐらいでやろうな。それでいいだろ?な?」

「うん。」

「じゃあ仲直りな!仲直りのハグするか?」

「「もうそんな歳じゃない!」」

 2人の声が被った。


 小さい子じゃないんだからしないよ!


「お母さんとレオンは?」

「まだ話してるよ。」

「お母さんってレオンの家庭教師なんだって。知ってた?」

「うん。レオンのお母さんは、お母さんの友だちだからね。」

「そうなんだ。」


「お風呂入ってきたら?」

「うん。」

「俺も入ってくる。」

「ああ、行ってらっしゃい。お風呂上がったら話せることは話してもらおう。」

「うん。」


 お風呂に入る。テンも今日は一緒に入る。入る前に洗浄魔法をかけるので意味はあまりない。


 ざぶん

 テンが湯舟に飛び込む。その途端にふわふわの毛皮が水を吸い、細くなる。普段見えている体形がほぼ毛なのだとわかる。


「ガリガリ―。洗濯板ー」

 

 テンのあばらがガリガリで洗濯板のようなのをからかう。

 テンは大きくなりたいので不満そうだ。


「きゃん」


 水魔法を使っている。

 湯舟の中の水を動かしてコツをまなぶんだろう。努力家だなあ。


 お風呂を上がると、レンがタオルを持って待っていた。そのタオルにテンが飛び込む。転がって自分で拭いている。器用だなあ。

 大体の水分が拭けたら風魔法で乾かす。元通りのふわふわに戻った。可愛い。


 お母さんとレオンはお母さんの書斎に移動したそうなので居間で寛ぐ。うちの居間は絨毯がしいてあり、床で寛げる。座るレンにもたれ、テンを抱っこしながらのんびり過ごすことにした。


「どうして、いきなり試合なんかしたんだ?最近は真剣に訓練することもなくなっていたのに。」


 お父さんがオレンジジュースを入れて持ってきてくれた。


「アルがいきなり本気の試合をしようって。」

「お父さんは、リアぐらい強ければ自分の身を守れるし、テンもいるからリアがしたくなければ無理しなくてもいいと思っていたから、リアがこれ以上やりたくないならそれでもいいんだよ。まあ、もう少し強くなってくれると安心は安心なんだが。」

「うん。わたしも自分の身を守れればそれでいいし、魔物つかいとしてテンとやっていければいいと思ってるんだ。ダンジョンにも興味があるから、行ってみたいし、行けるだけの実力をつけようと思ってる。」

「うん。」

「アルが去年ぐらいから家でお父さんがいるときは一緒に訓練するけど、あまり本気を出さなくなってたし、二人ではやらなくなってて、一人でどっか行っちゃうことも多かった。だから、剣術はもういいやって思ってたんだけどな。」

「アルも何か考えてるんだね。」

「うん。」

「まあ、剣術はやって損はないさ。頑張ろう。」

「うん。」


しばらくして、お母さんが書斎から出てきた。

「お母さん、お話おわったの?」

「ええ。レオンはちょっと色々考えているみたい。アルがきたら私から話すわ。」

「わかった。」







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