第10話

 次の日の朝、お父さんは夜勤でいないため、テンとレンの朝ごはんを用意し、自分の分も用意して食べる。

 ご飯を食べ終わったレンは、テンの顔をきれいにしたあと、わたしが歯磨きをしている間に私の鞄を取りにいったりとかいがいしく世話をしてくれる。


「じゃあ、レン行ってくるね。」「きゃん」

 と言ったら、レンに首を振られた。


 え、違う?


 レンは私を学校まで送ってくれるらしい。


 家を出ると、隣の家から、おじさんとアルとレオナルドが出てきた。


「おはよう。」

「おはよう。」

「おじさんも学校行くの?」

「転入の手続きにね。」


 レオナルドは、瞳の色も変えている。青色だったのが、茶色になっていた。




 4人と2匹で歩いていくと、ユラとマヤとの待ち合わせ場所に着いた。


「おはよう」

「おはよう」

「おはよう、あれ、その子おじさんの・・・」

 マヤがレンを指して言う。

「しばらく送って…え、違う?送り迎え?してくれるんだって。」

 レンに訂正された。


「言ってることわかるの?」

「うん。スキルかな?」

「そうなんだ。」


 レオナルドさんがまた不思議そうに見て、おじさんを見た。おじさんが首を振る。なんだろ?


 ユラは、アルと一緒に学校に行けることに舞い上がっているようだ。






 学校に着いた。朝礼の時間だが先生が来ない。教室がザワザワし始めた。しばらくして、遅れて来た先生の後ろにはレオナルドがいた。


「みんなに転入生を紹介する。レオンくんだ。アルとは従兄弟だそうだ家庭の事情で転校してきた。」

「皆さん、初めまして。レオンです。アルの家に住んでます。スキルは剣士です。よろしくお願いします。」


 ここら辺では見ない感じの男の子の登場にざわざわとなる。


「じゃあ、レオンはアルの隣にでも座ってくれ。」

「はい。」


 アルと一緒の長机に座っていた数人は、レオナルドのために場所を開けている。





 昼休み、レオナルドはアルの友だちの男の子たちと一緒にいた。女の子たちは近づきにくいみたいで、チラチラと確認している。

 私はお昼ご飯を食べながら昨日のお父さんたちとの話をする。今日のテンのおやつはにんじんだ。


「レオンはアルの家に住むことになったんだ。」

「そうなんだ。アルの家なら安全そうだよね。」

「うん。」

「それで、昨日、私とアルとレオンは冒険者の免許を取って、取れたら、ダンジョンに行くことになったんだけど、ユラとマヤも一緒にいかない?」

「行く!」

 ユラが答えた。


「パーティってこと?」

 マヤが聞く。


「うん。私たちバランスいいらしいからどうかな?」

「いいよ。」


 マヤも快諾してくれた。よかった。




 放課後、冒険者クラブに行く。今日は実技だ。体力作りのため走り込み、そのあと、剣術だ。ペアになって打ち込む。それぞれスキルはあるけど、剣は扱えた方がいいからだ。


 クラブを終えて学校を出ると、校門にはレンが待っていた。


「レン!」


 わたしはレンに駆け寄る。テンも鞄からはい出てレンに飛びついた。


 アルとレオンは見える距離にいる。いきなり一緒に帰るのはちょっと変だけど、心配なので近くにいるのだ。



「じゃあ、後でね。」


 放課後はわたしの家で冒険者免許の勉強をする。ユラとマヤに手を振り、家に向かう。私たちの家は街の中心からちょっと離れているので、少しだけアルとレオンに距離を詰めておいた。


「ただいま」

「おかえり」

 眠そうなお父さんが出てきた。

「今日からうちで冒険者免許の勉強しようと思うんだけどいい?」

「おう。訓練所の方でするのか?」

「うん。あっちなら広いし。」

「わかった。」

 眠そうにあくびをしながら、お父さんは寝室へ戻っていった。


 ユラとマヤが来た。訓練所の木陰で冒険者免許の教本を読みながら問題を出し合う。


「ねー、アルくんとレオンくんはー?」

 勉強に飽きたユラが聞く。

「んー?」

「パーティってあの2人もでしょ?一緒に勉強しないの?」


 その考えはなかった。

 わたしとマヤは顔を見合わせる。


「呼ぶ?多分、訓練してると思うんだけど…」


「いるかなあ?」


 ユラが、アルの家の方を垣根越しに覗き込む。


「いなかったら家の周り走ってるかもよ。」

「いなかった。走ってるのかな…」

「また明日、学校で声かければ?」

 マヤが言う。

「うーん。リア、お願い。」

「いいけど、学校内で話しかけても素っ気ないからなあ。」


「誰の話?」

 急に男の子の声がした。

「あ、レオン、アルの話だよ。アル、学校だと態度違うの」

「そうなの?」

「そんなことねぇよ。」

「え?そう?」

「うん。」

 そう言って、アルは私の隣にドカッと座った。


「で、資格の話だろ?」

「そう。一緒に勉強しよって。」

「でも、俺筆記は完璧だから。」

「「「え?」」」


 そうなのだ。ちょっと乱暴な雰囲気からは想像つかないが、アルは成績優秀なのだ。


「なんだよ。その意外そうな顔。」

「いや、だっていつ勉強してるの?」

 マヤが聞いた。ユラがうんうんうなずいている。


「勉強?何回か読んだら覚えるだろ?」

「うわあ。賢い人の言い分だ。」

 マヤが嫌そうな顔してる。

「レオンくんは?」

 ユラが聞いた。

「僕?資格の教本に乗ってたことは、家庭教師にならったことだったから、今更勉強しなくていいかな。」

「こっちもかー。」

「俺らは合格確実だから、よろしく頼むぜ。」

 アルに笑いながら言われた。

「うわあ。いやな感じ。」

 と言いながら、全員で笑った。


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