第6話

 訓練が終わり、アルの家に行く。お父さんは今日の朝におじさんと話をし、夜におじさんと一緒に話し合うことにしたそうだ。おじさんが男の子と話したところ、自分で説明したいと言ったらしい。

 アルの家の客間に向かうと、昨日の男の子が本を読んでいた。


「おかえり。あ、昨日の子たちだね。昨日はありがとう。」


 アルの服を着ているので昨日と違って普通の恰好なのに、キラキラして見えた。金髪だからかな。


「いいえ、もう大丈夫?」

「痛いところあったら言って」


 わたし、マヤが言い、ユラがうんうんとうなずいている。


「きゃん」


 テンが鞄から顔を出しあいさつした。


「昨日の子かな?大きさが全然違うけど・・・」

「そうだよ。テンっていうの。」

「そうか。可愛いね。」

「ありがとう。テン、かわいいって」


 テンを鞄からずるっと出して撫でる。テンも褒められて嬉しいみたいで、私の顔を舐めた。



 それぞれ、思い思いの場所に座る。わたしもテンを膝に乗せたままソファに座る。


「僕はレオナルド、領主の息子だよ。」

「・・・えっと領主の息子さんが、なぜ、あんな目に?」

 しばらくの沈黙の後、マヤが聞いた。

「僕は亡くなった前妻の子なんだ。継母と父の間には弟がいてね。継母は弟に継がせたいんだ。だから、僕を始末するようにと金で雇ったやつらに命じたみたいなんだ。」


 みんなの息をのむ音が聞こえる。わたしも言葉が出ない。


「よくあるお家騒動だよね。」

「え、よくあるの?」


 私たち三人は戸惑う。アルだけはわかっているような顔をしていた。


「世話になったね。助けてくれてありがとう。でも、君たちに迷惑はかけられないからすぐに出ていくつもりだよ。」

「なに言ってるんだよ。今出て行ったら捕まりにいくようなもんだろ?」

「父上のところまでいけば何とかなるよ。」

「その親父はどこだよ?」

「王都かな?」


 王都は行ったことないのでわからないが、とんでもなく遠いはずだ。


「すごく遠いよね。」

「普通に行けばね。」

「普通以外の行き方があるの?」

「ああ。あの山にダンジョンがあるの知ってるだろ?」

「あの奥に転移陣があるんだ。あれを使えばすぐに王都に行ける。」

「危ないよ。」

「そうだよ。ダンジョンに入るには資格がいるんだよ。」


私たちは口々にレオナルドを止める。


「しばらくうちにいればいいだろ?親父もそう言うよ。」

「でも、僕がいたら、迷惑がかかる。」

「昨日の奴らはもう警備隊に捕まってるし、お前がどこにいるのかなんて継母知らないんだから、しばらくは平気だろ?」

「それは、そうだが。」

「それなら決まり。これからのことは親父が帰ってきてから一緒に考えようぜ。」

「う、うん。」


アルが強引に決めてしまった。

レオナルドの話は私たちだけの秘密になった。


 

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