第3話
いつもの場所に着いた。何かをするわけでもない。木登りしたり、学校の話をしたり色々しながらいつものようにダラダラ過ごす。
「隣のクラスのジルくん、騎士専門学校に行くんだって。」
ユラはカッコいいって言われる男の子の話をよくしている。
「ジルくんってハルバート持ってる子?」
「それはギルくん!」
わたしとマヤはまだ男の子に興味がないので、あまりわからない。
ユラが土魔法でジルくんの顔を作ろうとしている。見せてくれるようだ。
わたしも土魔法を使ってテンの人形を作った。
マヤは、その人形を飾るために岩を平らにしてくれている。拳で。
テンはまた土魔法をジッと見ている。土魔法も覚える気?
草むらから、肩に怪我をした男の子が出てきた。高そうな服を着ている。
「きゃっ」
ユラが小さく悲鳴を上げる。
テンがカバンから飛び出し大きくなった。
「きゃん!」
「ごめん!逃げて!」
「え?」
「このままじゃ君たちを巻き込んでしまう!」
そう言って男の子は、違う方向に逃げていった。
「どうする?」
「に、にげる?」
「え、でも、どうしよう。」
と私たちが悩んでいたら、
「いたぞ!」
「やれ!」
「殺すな!捕まえろ!」
という声がした。
そうっと声のした方をのぞくと、さっきの男の子が3人の大人に囲まれている。どちらも見たことのない人たちだ。
「おい!何見てるんだよ!助けるぞ!」
「え!?アル!?」
「アルくん!?」
アルが剣を持って飛び出していった。ユラはレオに言われてすぐ追いかけていった。
「どうする?」
私が聞くと、
「行くか…」
「うん。テン!行くよ」
アルとマヤは近距離型なので、まだ走っている。ユラももう少し近づかないと届かない。
「テン!おじさんたちに
遠距離攻撃の射程圏内に入ったので、テンに指示した。
「きゃん!」
バリバリー!
テンの鳴き声と共に、おじさんたちに雷が落ちる。
「うわ!何だ!?」
「ぎゃ!」
一人は剣を取り落とした。でも、まだだ。ちょっとふらふらしているぐらいだ。他の二人もちょっと手がしびれたぐらいだろう。
「えい!」
ユラの声が聞こえた。
岩の塊がいくつも飛んでいく。
おじさんたちは盾で岩を受けている。
「テン!
「きゃん!」
風の刃がおじさんたちの腕や、太ももを切り裂く。さっきフラフラしていた人が膝をついた。
「おい!お前らなんなんだよ!」
アルが追いついた。男の子の横に立ち剣を構える。
「そこのぼっちゃんに用があるんだよ。」
「何の用だよ!」
「一緒に来てもらうだけだ。」
マヤも追いついて構えている。ユラも、私も距離を詰めた。
にらみ合いが続く。
話していないほうのおじさんが、アルに向かっていった。
カキン!
アルの一太刀で相手の剣は、折れてしまった。
「子どもとは思えない実力だな。」
おじさんは剣を捨て、じりじりと後退していく。
「テン!
風の刃がまた三人を襲う。
「はあ!」
ドゴン!
マヤの一撃により、さっき剣を捨てたおじさんの歯が折れた。遠くの方にぶっ飛んでいく。
もう一人のおじさんが、アルと切り結ぶ。こっちのおじさんは強そうだ。
「えい!」
ユラの声が聞こえたと思ったら、そのおじさんに火の玉が当たった。
「ぎゃ!」
あまりの熱さに慌てている様子が見える。その隙に、アルがおじさんの剣を叩き落とした。
「くそお。」
その隙に私が草魔法を使う。
「ぐわ!何するんだ!これはなんだ!」
蔓がおじさんに巻き付いていく。マヤがおじさんの顔を殴り気絶させた。
ぶっ飛んでんでいったおじさんを探しユラが風魔法で運んでいる。最初に倒れたおじさんは近くにいるのでそのままでいいかと、一人だけ草魔法で縛る。
おじさん3人のポケットを切り裂き中に刃物がないか確認した。
初級学校で習った盗賊に襲われた時の対処法が役に立った。できるだけ直接触らないように確認し、縛った後大人に知らせるのだ。
でも、初めての経験なので不安だ。
「首から上だけ出して埋めとく?」
ユラが言う。私も賛成だ。
私は、水魔法を使い、おじさんたちにざばっと水をかけた。ユラが土魔法で地面を柔らかくしていく。
土が柔らかくなったので、私も土魔法を使い、おじさんたちを土で包んでいく。熟練の魔法使いはこれを一瞬でできるらしい。
アルとマヤはおじさんたちが落とした武器を運んでいる。もちろん直接触ってはいけないので、手袋をしてからだ。
後始末が終わったころ、男の子がフラッと倒れた。
「おい!」
アルが支える。私たちも駆け付けた。
マヤが回復魔法を使う。肩から流れていた血が止まった。細かい傷はユラが治している。
「どうする?」
「俺がとりあえず連れて帰るよ。レミ、テンに乗せてくれるか?」
「え?あー。乗せてあげたいのは山々なんだけど・・・」
しゅるんとテンが縮んでいく。
「今日はもうこのサイズだと思う。」
斜めに肩からかけているウェストポーチを外し、低い位置で開いてあげる。テンがしゅるっと入った。もう眠そうだ。
「え・・・」
「実は幼体なんだよね。」
「あんなに魔法使える幼体いるのかよ!」
「変な子なんだよね。」
そう。幼体は魔法が使えない・・・はずだ。テンは親離れが早かったから使えるのだと思う。
「変でいいのか。それ。」
それ呼ばわりに何か思ったのか、テンはアルを見つめる。アルがひるむ。
「まあ、いっか。じゃあ、俺が背負っていくから、リア、俺の荷物よろしく。」
「わかった。」
「じゃあ、私たちは先に町に戻って警備隊を連れてくるね。」
「うん。よろしく。」
「なんか訳ありっぽいから、こいつのことは俺が親父に言うから、盗賊に襲われただけにしといて。」
アルん家のおじさんは警備隊の偉い人だ。判断してもらうには最適だろう。
「わかった。」
二人は走り出した。
わたしたちは、アルの家に向かった。
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