第3話

299(肉球)カフェの店内には、里子さんお手製のアップルカスタードパイが焼き上がる香りが広がっていた。お昼の12時、森本夫婦はピークタイムを迎えた店内でテキパキとお客様を接客している。


そんな中、壁側に置かれた小さな赤いソファを占領する2匹の猫がいる。ブチ猫のマツと八われの田所だ。ソファの上でのっぺりうつ伏せで寝ている田所に、マツが覆い被さるように乗っかってむにゃむにゃしている。マツは、人よりも猫が大好きな猫である。時折、マツを触りにお客様が来るも一切相手にしない。只、暇をもて余す猫を見つけては、ちょっかい遊びや一緒に寝ようと試みる。森本家の猫達の中では、田所が唯一何も抵抗しないので、マツは田所にくっつきがちである。


だがある時、田所よりも従順な猫と出会ってしまう。それは、森本夫婦がお店の常連さんから頂いたと言う白い猫のぬいぐるみ。サラサラの白い毛並みに柔らかい身体。まん丸の目にピンク色の鼻。店主の森本は、この白い猫をマツの性格を知った上でプレゼントしたのだ。


ゴロニャー!


マツはこの日から、白い猫にゴロニャーなのである。ゴロニャーで始まり、ゴロニャーで終わる日々。里子さんが白い猫のぬいぐるみにつけた名前はマシュマロだった。マツは、自分の名前の響きが一番好きなのだが。マシュマロという名前の響きも気に入り、二番目に好きな名前にランクインしていた。


マツとマシュマロの2匹がずーっと一緒にいる姿を端から見ていた他の5匹の猫達。その5匹の猫達は、マツ以上にマシュマロに対する感謝の念を抱いていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る