第6話 仲間との出会い
二振りで足に繋がれた鎖は解かれた。その瞬間から、二人は奴隷でなくなった。
——こんなたった二人の奴隷を助けても、どうにもならないのかもしれない。
でもやらないよりはマシだろ、ここが異世界であったとしても関係ない。
人間が当たり前のように奴隷として扱われる、こんな現状を黙って見過ごせるほど俺は冷めていない。
今の俺なら、もしかしてこの世界を変えられるかもしれない。
ただ、それだけの話だ。
「じゃあ全員身包み剥がさせてもらうぜ……って言ってももう聞こえてないか」
悪漢たちが身につけていた、食料などが入った袋の全てを引っぺがす。
「ひぇぇぇっ!!」
おびえて地べたに手をはいつくばり、尻餅をつく男の子。今度は女の子がこちらをむっと睨みつけ。
「どうかしたか? ぷはあっ、何はともあれ助かったあ……!」
水をがぶがぶと飲み、干し肉やパンを口いっぱいに入れて。
「ほらっ、ほはへらほふへよ!」
「——ほら、お前らも食えって」
遠慮する二人に、悪漢たちから奪った食糧袋を半ば無理やり手渡す。
「お前らはこいつらに散々酷い目に遭わされたんだろ、その報いってことさ」
「……あ、ありがとうございます」
「それと聞きたいんだが、この砂漠を抜けるにはどうしたらいいんだ?」
茶髪の女の子は、すぐに指を指す。二人の警戒も少しは解かれたようだ。
「分からない、分からないけど多分こっちの方角にずっと進めば街があるはずだわ」
金髪の男の子は、すぐに続けて。
「確かあの男たちは、魔法都市イルミゼリオンへ向かうと言ってたはずです」
その街の名前を聞き返すと、男の子はさらに説明を続ける。
「そうです、そこには最高峰の魔法師達が集まる”ローデンス魔法学院”があるんですよ」
そのなんちゃら学院という学院名に、ぱっとしない顔をしていると。
「ローデンスは、安定した魔法力供給ができる才能のある魔法師だけが入れる超名門なんです、僕たちみたいな”魔法力無し”の奴隷剣士とはかけ離れた存在ですね」
なぜかこの時、体の奥底からビビッと来てしまった。
この物語の終着点は、どうせそこにあるんだろうと。
——よし決めた。
「俺はそこに向かう、魔法力かなんだかは知らないけど俺はそこへ行くことにした」
女の子が、横から不安げに。
「でも、この先には大森林が広がってるはずだよね?」
男の子は、続け様に言う。
「あの森はサーズミリオン大森林、別名”帰らずの森”とも言われていて魔物の数が極端に多いから普通は
「じゃあ、来た道を戻るって言うの? もう一週間くらい歩いて来たじゃない、それも無理があるわ」
二人は、何かを言い争っている様子。
「ありがとう、大体わかったよ。向こうに行けばいいんだな?」
二人は、こくりと頷いた。
「じゃあお前らはもう自由の身だ、どこへでも行くといい。それじゃあ達者でな」
「ええっ……そんなの無責任です。僕たちの主を勝手に殺しておいて、それはないんじゃないですか?」
俺は、気まずそうに頭をかきながら。
「おいおいなんだその言い分は? じゃあ分かったよ、道案内として付いて来てくれ」
「がってん、承知です」
こうして、冒険仲間が増えたのであった。
「お前ら、名前はなんて言うんだ……?」
「僕はフォス、そしてこっちが———」
短髪で金髪の目つきが少し悪い少年に。
「フィアです、フォスは私の大事な弟です」
長髪で茶髪の穏やかな目をした少女、そんな二人の顔を見つめると。
身長は変わらないのに、なぜか自分は大人でこの二人は子供のように思えた。
体じゅう傷跡だらけ。それにひどく痩せ細っている、でも多分それは俺だって同じだ。
「俺の名前はソラ、よろしくな。それじゃあ早速出発するとしますか!」
俺はフィアとフォスと共に、再び荒野を歩き始めた。
相変わらずの景色だが、仲間がいるというだけでちょっと安心感が芽生えた。
俺は今、ようやくこの物語の出発点に立てたような気がした。
「それはそうと、ソラさんは何でこんな所に居るんですか? 」
「ここは本来人が訪れることはない無法地帯、ラージラスティファクア砂漠ですよ?」
(何でって言われても、転移したとか正直に言っても信じられないよな……)
「ここはその中でもかなり危険な地帯ですよ、何で生きていられたんですか?」
「ちょっと踏み込みすぎよ! 人には知られたく無いことの一つや二つあるもんでしょ」
「そういうことだ、ありがとうフィア」
その後、一週間の更なる放浪の末にようやく大森林まで辿り着いた。
この時には既に、二十人分の食料が無くなってしまっていたのであった。
「気を引き締めて下さいね、ここからが本番ですよ!」
俺たちに向けて、フォスからは注意勧告の掛け声がかけられた。
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