第3話 生存本能にしがみつく
◆DAY2◆
「ここは……!?」
——ああ、そうだった。
俺は今、砂漠のど真ん中にいるんだった。
「ああっ……!!」
口を尖らせ
現実が見えていても理解できない、受け入れられない心があった。
そこには叶もいなければ優希もいない、永遠も未来も涼音も、誰もいない。
視界が明るくなったことによって正気に戻され、嫌なことを考えてしまう。
仮にあの世界に帰れたとしても”あの姿”のままで再開することができるのか、俺が帰った時、まだ生きていてくれるのか。
何十年先のことになるか分からない。彼女たちは、そんなにずっと俺のことを待っていてくれるのか、覚えていてくれるのか。
「このままじゃあ駄目だ……!」
このままの調子で挫けていたら、目の前の灼熱の世界に
絶対に諦めてやるもんか。手を胸にギュッと押し当て、思いを
「今もここに皆んなの温かさが残ってる、これからだってずっと———」
もう決めたんだ、大好きな日常を取り戻すために俺は進むと。
「そうだ、昨日の植物は……!?」
植物があるということは植生が変わってきているかもしれない、もっと植物が生えるべき場所へ向かうんだ。
「やっぱり分からない……」
近くの植物を見て思い悩む。植物には詳しくないし、そもそも前世の知識がこの世界で役に立つかどうかも分からない。
この植物は食べられるのか、この植物には毒は無いのかと悩んでしまう。
「迷ってても仕方ないな」
ものは試し、俺は二種類のうち比較的薄い方の葉っぱを引っ張ってジャキっと石で刈りとり、葉っぱをもぐもぐと噛み締めると。
「苦えっ……!!」
味からして食べれたもんじゃなかった、でも今はそんな事言ってる場合じゃない。
強烈な苦味と渋味に耐えながら、何度も口に葉っぱを運び。
不味すぎるけど全て食べた、少しでも空腹感を
「絶対、生き残ってやる……」
人間である限り、この過酷な環境に順応はできない、だが生きしのいで脱出するだけならできるかもしれない。
「もしかしたらこの世界は全て砂漠で。出口なんて、どこにも無いのかもしれない」
もしそうであったとしても、何としてでも生き延びるんだ。
「こっちの方は見るからにやばそうだ……」
もう一方に生えていた、しわくちゃでくすんだ赤色の果物を手に取る。目を絞るように閉じて口に放り込むと
「背に腹は変えられない、って意外といける……?」
そのまま数個の果実をむしゃむしゃと体に取り込んだ後、残りはポケットにしまった。
「……もうそろそろかな?」
蒸発装置に溜まった水を飲む。一滴も
「半日じゃあこんだけかあ……」
葉の器を逆さにして水滴も残らず飲み干し、器を頭にかぶせ立ち上がった。
行くあても分からずに、この干からびた大地を一歩一歩踏み締めて進む。
考えなしに歩いてちゃ仕方ないけど、方角から目的地が分かるわけでもない。
「とにかく真っ直ぐ進もう、少しでも移動の無駄を無くすんだ」
ずっと同じ方向に歩き続ければいつかは抜け出せると、俺はただ無心で歩き続けた。
「流石にこれはきつい、空っぽの胃の中がさらに寂しくなっちまった……!」
いきなり
この経験を
ポケットの中にある実を2個取り出して口にする。なけなしの食糧だ。
◆DAY3◆
「はあ……はあ…………」
あれから一度も食糧にありつけていない、砂漠を踏み締める足がもつれ始めた。
「あとどれだけ歩けばいい、後どれだけ歩ける体力が残っている?」
今もし砂漠の中心にいるのならば後何日歩けば抜けられる、あと何日夜が明ければこの地獄は終わるんだ。
段々と、嫌な方向に考えが向かってしまうようになってきた。
◆DAY4◆
「あ、虫が……!!」
狙いも定まらないまま、グサグサと何度も何度も石で地面を殴りつける。
「よしっ、殺せた!!」
鼻をつまみながら、もさもさと石で砕いたゴキブリを
「殻も硬いし、足も触角も全部が気持ち悪い……それでも大切な食糧なんだ。ああ、もっと食べ物はないのか……くそっ!!」
今だって、キューブさえ使えればどうにでもなるのに。
「どうしてだ、どうしてなんだよ……!?」
この世界を救うために転移されたというのならば、なぜこんな砂漠のど真ん中を転移先に選んだんだ。
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