第2話
「初めまして。私は『アイリ・シュベルン』と言います。えーっと、お名前は『シェル・ザック』さん。あ、新卒の方ですね……」
「はい」
「そして『測定』の結果は……あら?」
自分を『アイリン・シュベル』と名乗った受付の女性はシェルの『測定結果』を見て固まった。
――ふぅん、なるほどねぇ。
アイリンはまじまじと測定結果を見て、なぜ目の前の彼女が自分の担当に回されたのか察した。
「……卒業は国立の魔法学園で測定結果がコレと」
アイリンは「なるほどなるほど」と一人で呟きながら書類をすみずみまで見る。
「あの」
「はい」
シェルは辺りの様子をうかがう様にキョロキョロ見渡す。
「今って忙しいんですか?」
「ええ、まぁ。ちょうど今って今年学校を卒業する新卒の方が就職する時期になりますので」
――まぁ、本当ならもっと早く案内出来たんだけど。
しかし順番が前後してしまうとクレームになってしまう可能性があるため、基本的に順番通り案内をしているのだ。
「なっ、なるほど……」
どうやらアイリンの話を聞いてシェルも納得した様だ。
「あの。待っている時に知ったんですけど、ここって「貴族」が来る事もあるんですね」
ただ、どうやらその人たちはシェルたちがいる一階ではなく二階に案内されるらしい。
「ええ、そうですね。たまにいらっしゃいますね」
コレは嘘ではない。
――さすがに平民と貴族が「同じ」というワケには……いかないのよねぇ。
シェルが学んでいた『国立シュタイン魔法学園』では国王の強い希望もあり「貴族も平民も関係ない身分撤廃」という方針が取られていた。
――だからまぁ、言いたい事は分からなくもないけれど。
しかし、いくら学園がそういった方針が取られていても、貴族と平民との『差』という分厚い壁があるという事なのだろう。
――でもまぁ。
そもそも昔から様々な点で違うのだから「ここでは身分も関係ない。すぐに仲良くなれ」と言われて出来るのであれば苦労もしない。
「ふむふむ……。今日はどうしてこちらに? 国立の魔法学園。しかも新卒で測定結果を見る限りかなりの実力者。そうなれば引く手数多では?」
「そう……ですね」
実はそもそも『魔法』というモノ自体珍しいモノで「魔法が使えるというだけで将来が約束されている」と言っても過言ではないほどの『才能』だ。
そして実はその魔法が使える人の割合は貴族の方がちょっと多い程度で平民とのほとんど差はないらしい。
その上「その家の人間であれば」というモノでもないらしく、言ってしまえば完全に「天からの授かりモノ」という状態だった。
――だから、私が「魔法が使える」って分かった時も、もの凄い騒ぎになったのよね。
そんな中での「魔法学校の新卒」はそれだけ価値があるのだ。
「あの、それで実は……」
「ふむ。なるほど……何か事情があるのですね?」
口ごもるシェルの言葉に対し、アイリンは穏やかな口調。でも笑顔だけど探る様な視線に……シェルは「はい」と言いつつ俯いてしまった。
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