第25話

 王子も王女も王妃を一目見るなり頬を染めているわ。反対に側妃様達は青褪めた顔でいる。


「この度の役目ご苦労であった。ソフィのおかげでフィラは王妃として復帰する事が出来た。礼を言う」


「私からもお礼を言います。そして側妃としての役割をしたカーラ。貴方は王女を連れて荷物を纏め即実家に戻りなさい。私の言っている意味がわかるならね」


カーラ様は震えながら跪き了承するが、王女は訳が分からない様子。


「王妃様、母が何かしたのでしょうか」


「そうね。私は見ていた、と言うしかないでしょう」


パチンと指を鳴らしたと思うと王女の髪の色が変わってゆく。王女は自分に掛かっていた魔法に気づいて驚きを隠せないでいた。


「貴方は陛下を騙していたわね。処刑に値するけれど、側妃としての役割を全うしてくれたお礼よ。実家に戻るだけで許してあげる」


カーラ様と王女様は騎士に促されて部屋を出る。


「ミラ。王妃としての役割有難う。けれど、貴方の役目もこれで終わり。北の塔へ。王子達は私が責任を持って婿へ出すと誓いましょう」


「王妃様!何故母上は北の塔へ幽閉されなければいけないのでしょうか」


「幽閉されるほどの事をしたからよ。当然でしょう?」


王妃は凍えるような視線と威圧を王子に向ける。


「理由を教えてあげましょう。そこのミラは私の娘、次期女王を手に掛けようとした。未遂となって以降も手を回し王女を平民に落としたのよ?これは無罪と言えるのかしら?」


母の威圧で王子達は震えているわ。もしや、母の魔力は王族を超えている!?


「昨日、貴方は私の娘を平民と罵ってくれたわよね。ミラがした事なのよ。貴方達も同罪として幽閉でも良いのよ?さぁ、選びなさい。母と一緒に幽閉されるか、私に付くか」


 母も父も先程の別世界の住人とは違い、陛下と王妃となっている。その落差から恐怖さえ覚えるわ。


選択を迫られた王子達は顔色を無くして跪き、服従の意を示した。そして宰相に促されるように王妃も連れ出されて行った。残った王子達に母は声を掛ける。


「貴方達は私がしっかりと面倒を見てあげるわ。臣下としてしっかりと働きなさい。王位継承権は残念ながら存在しないし、王の座を簒奪する事は出来ないのよ。これから先もずっと」


 王子達は跪きながらもその言葉に違和感を覚えたよう。


「不思議、という顔をしているわね。特別に教えてあげましょう。私は魔人と結界に取り込まれる状態が何年も続いていたのよ。魔人の能力が移ってもおかしくはないと思わない?」


母は王子達に微笑みを向ける。


「フィラ、どういう事だい?」


優しく陛下が母を抱きしめ、頬に口付けしなながら聞いている。


「魔神の能力がね、教えてくれたのよ。私達の未来の一端を。私はソフィに助けられてから王子を4人産むんですって!!凄いわよね!私、頑張るわ!」


あぁ、また2人の世界に入ろうとしている。


「そうそう、ソフィとルイ君。貴方達は一度ヴァイエン国に帰ってすぐに婚姻しなさい。式を挙げてからこちらに来るように手配をしたから。


ソフィは女王となるのを望んでいないのかもしれないけれど、次の王子が生まれるまでの間、ルイ君と跡継ぎの勉強をして貰うわ。ルイ君は文武ともに優秀だと聞いているわ。大丈夫よ。ねー。貴方」


「あぁ、そうだな。ワシも頑張らねばならんな」


「そうだわ。ローラン。今のままでも渋くて素敵だけど、子どもを沢山産むならもっと若い方が良いわ。こっちを向いて頂戴」


すると、母は父の額に自分の額を付け、何か呪文のような物を唱える。


母の口から紡ぎ出される唱詠呪文。聞いた事の無い言葉。


 魔人が使う魔法なのかもしれない。父が光出したと思うと、父は若くなっている。どう見ても30代前半に見えるかどうか。


これを見た周囲は驚愕し、目を見開いた。母は魔人を取り込み、魔王になったのではないだろうか。


……この国で最強なのはお母様だわ。むしろ2人とも若返ったのだし、私は女王の勉強をしなくても良いのでは無いのかしら?





 その後、私達は家族として過ごし、ヴァイエン国へ帰る日となった。側妃が行った私を平民とした手続きは無効となり、第一王女と正式に発表された。


カシャ王国での滞在は濃密な日だったわ。


「ルイ。私で本当にいいの?」


「何を言ってるんだか。俺はソフィしかいない。俺にもっと我儘を言ってもいいんだ。ソフィ。好きだ」


「私も、ルイが好き」


「嬉しいよ」

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