第7話
私は必死で叫んだ。
何度か叫ぶと声が届いたようで避難しようとしていた村人達が戻ってきて、動かなくなった魔物を横目に怪我人を運んでくれている。怪我人は6人ね。
一番酷い怪我の人から優先して治療していく事にした。けれど、一人一人のダメージは大きいわ。
「誰か、この人の千切れた腕を探してきて!今ならまだくっつくわ」
私の言葉に涙を流して立ち尽くしていた女の人が走り出す。私は失った物は生やせないけれど、くっつけて修復は出来る。
その間に内臓が傷ついている人達の治療を行っていく。
「腕、見つかったわ!!」
大声で何度も見つかったと口にしながら女の人は千切れた腕を抱えて駆け寄ってくる。
普通の女の人ならこの惨劇にパニックになったり、倒れる事もあるわ。それなのに震えながらも腕を探して抱えて持ってくるのは凄い事だわ。
私は取れた腕を受け取ると、治療魔法を使い接合していく。なんとかくっついたわ。動くかどうかの確認は後日ね。
6人の重症者を治した所で目眩を起こす。
「ごめんなさい。魔力が枯渇する前に今日はもう休みます。大きな治療は終わったので、後は怪我人の身体を拭いて安静にさせて下さい」
そう言ってフラフラと歩きだす。
久々の緊張感と攻撃魔法。いくら魔力が前世とは比べ物にならないほど増えてるとは言え、久々の戦闘と6人のフル治療は疲れたわ。
馬車の周りに体力の限界を感じながら結界杭を打ち込んで即就寝。
何だか色々と限界突破出来そう!
翌朝、目覚めるとすぐに村長さんの所へ向かう。昨日、治療した人達の具合を確認したかったからね。村長さんは私を見るなり大喜びで出迎えてくれた。
「村長さん、皆の怪我人の具合はどうですか」
「君のおかげで6人とも元気になっていた。本当に有り難う」
村長さんは安堵の笑みを浮かべている。良かったわ。
「腕の千切れた彼は大丈夫でしたか?」
「あぁ、大丈夫だろう。手を動かしてはいたぞ。2軒隣の家だ後で行ってみると良い」
「分かりました。治療費についてなのですが、重症者の治療なので6人で6万ルーでお願いします」
「6万ルーで本当にいいのか!?サイクロプスを倒したのはどうするのだ。素材だけでも15万ルーはするぞ」
「私は治療師なのでサイクロプスの素材は要らないです。村でサイクロプスの処理をお願いします。あと、怪我人の傷の治療はしましたが、失った血は元には戻せないので当分は安静させて下さい」
「……分かった」
そう言って村長さんは治療費の安さに不満を漏らしていたが、しっかりと支払いをしてくれた。
どうやらこの村は他に病人も居なそうだし、やる事もないわ。明日には出発しても問題は無さそう。
私は治療後の状態を確認する為に2軒隣の腕が治った人のお家へ向かう。
「すみませーん。腕の具合を見にきました」
女の人の声と共に扉がカチャリと開く。昨日、必死に腕を探して持ってきた人だわ。新婚なのだろうか。美人な奥さんね。
私はベッドで寝ている男の人に魔力を纏わせて他の怪我の場所を探す。
アフターフォローもばっちりよ。
所々打撲の痕が見られた位かな。腕はしっかり繋がっていて問題無く動かせているみたい。良かったわ。男の人は今にも働きに出そうな勢いなので打撲の治療はやめにする。
血が足りないのよ。危険なのよそこの貴方!
心の中で叫んでみる。奥さんは私の言いつけ通り、旦那さんをベッドで寝かせておくと約束してくれたし、大丈夫よね。
何か食べて行かないかと言われたけど、新婚さんの邪魔しちゃ悪いからと家を出た。
私はまだまだ子供だし、気を使わない方がいいんだろうね。こういう時は。
この村、唯一の商店で食料品を買って馬車に向って歩きだす。
明日はこの村を発って王都に向かおうかな。
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