第8話

 村の用品店では木彫りの髪飾りが売っていた。この村の特産品かしら。とても精巧に作られていて一目で気に入ったわ。


私は同じ物を2つ買ってしまった。だって、壊れたからすぐ同じのを買いたくてもここの村まで来ないといけないんだもの。1つは壊れた時用に大事に取っておくの。


 そうして日用品や食料品を見てから馬車へと戻った。明日にはこの村を発つ予定にしたので教会の神父様に挨拶をしようと教会の中へ入って行った。


「ゾエちゃん、怪我は無かったかのぉ。村人達皆ゾエちゃんの事を心配しておったよ」


「おかげ様で怪我一つ無いです。神父様、村人達が皆元気なのは神父様がポーションを作っているからなのですね」


私は思った事を口にした。


この村の雑貨屋に置いてあったポーションは王都に比べてとても安価だと思い、店員さんに聞いたのよね。


「そうだのぉ。ワシは攻撃魔法が主で治癒魔法がほんの少しだけ使えるんじゃ。ゾエちゃん程ではないがな」


ここの神父様は私と同じレアな魔法使いだったのね。仲間意識なのか少し嬉しくなった。


「ワシは治癒魔法が少ししか使えんからポーションはいつも低品質なのが偶に傷なんだのぉ」


神父様はニコニコと話しをしてくれた。


「低品質でも作れる事は凄い事ですし、安価で買いやすいから村の人達は気軽に使えて皆元気なのですね。この村を支えているのは神父様のお力だと思います」


「ゾエちゃん、そう言ってくれるとワシも嬉しく思う。村人が世話になったし、お礼にと言ってはなんだが、ポーション作りを手伝ってみるかのぉ?」


「神父様、いいの?私に教えても」


「ゾエちゃんは村を救った英雄だからのぉ。どれ、こっちへおいで」


神父様はフォッフォッと笑いながら教会の奥にある部屋へと案内してくれた。


その部屋は壁一面に本が並べられていて部屋の真ん中にはポーションを作る用具が置かれていた。


 神父様はよく見ておくのじゃぞ、とポーションを作り始めた。


 一番初めは火魔法で器具を少しだけ炙るのだとか。そこから新鮮な薬草をすり潰して器具の中に入れ、魔法で少量の水を作り、少しずつ融合させる。


そこから器具を使って成分を抽出させるのだが、同時に治癒魔法を一定量を一定間隔で流し込む。これが難しいのだとか。


大まかなポーションの原液が完成する。


ここから残っている薬草の繊維を取り出したり、風味付したりして口当たりを良くさせる。この工程は作る人によって品質を下げる結果になるのだとか。


その後、効果を落とさないぎりぎりの水を加えてポーションが完成する。


 因みに原液を飲めば大幅に回復出来るのかといえばそうではない。ポーションの回復は品質分の回復量しか回復出来ないらしいので沢山飲んでも原液をのんでも効果は変わらない。


神父様は治癒魔法さえ強ければ最高品質になるほどの腕前のようだ。正式なポーションの作り方を間近で見せて貰えるなんて感動だわ。


「ゾエちゃんもやってみなさい」


神父様の作るポーションを見様見真似で作っていく。


 なんちゃってポーションは前世で作った事があるのだけれど、正式なポーションは教会の専売特許と言っても良い程秘密にされているのよね。


「ゾエちゃんは手際が良いのぉ。初めてでこれだけ出来るのは珍しいぞぉ」


神父様は手際の良さにとても驚いている。


「前にポーションを自力で作れないかやっていた事があるんです。最低品質の劣化版位しか作れなかったんです」


「そうか。ならしっかりと覚えて行くと良いのぉ」


市場に出回るポーションは教会が利益を得る為に流している物と、個人でポーションを研究して売却している物がある。


個人で作る物は当たり外れがあるから要注意なのよ。馬車に戻って忘れないようにすぐさま紙に書き残していく。


今日はポーションも作れたし、晩ご飯を早めに作ってお休みなさい。




今朝も清々しい朝日が目に飛び込んできた。


本来なら今日、旅立つ予定だったけれど、ポーション作りのために滞在を2日ほど延ばす事にしたの。


 品質何度か作っていく間にまぐれで最高品質と思われるポーションの原液が作れた。一杯作ったポーション原液をどうするのか聞いたら神父様からは神父様の小遣いになるらしい。

そして最高品質のポーションはまた魔物が来た時ように大切に保管しておくと言っていたわ。



旅立つ日。


神父様達に見送られながら馬車は静かに出発する。


王都へと向かって。

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