第3話 お友達とは?

 ボクは年中さんになった。


 ボクの通う幼稚園は“こども園”ていうのになったらしい。

 そしたらとっても小さい子さんたちもいっぱい幼稚園に来るようになったんだよ。


 ボクの“おとうと”も幼稚園に一緒に行くんだ。


 “おとうと”は幼稚園バスには乗れないから、ボクも一緒にママに幼稚園まで送ってもらうことになったの。

 そしてママは仕事にも行くようになった。


 ボクたちは“預かり”っていうお部屋で、暗くなるまでいなくちゃいけなくなったんだ。


 バスに乗るお友達は早く帰るのに、ボクは帰れない。ママと一緒にいる時間はもっと少なくなっちゃったし、おうちに帰っても「忙しい」って言って全然遊んでくれない。


 ご飯を食べないと怒るし、お風呂入るのイヤって言ったら怒るし、ちょっとイタズラしても怒る。

 なんかいっつも怒ってる。


 前はさ、ボクが〝イヤイヤ〟しても、笑って「そっかそっか」って言って、ボクがやる気になるまで待っててくれたのに。

 イタズラしたって喜んでくれてたのに…。


 パパもおうちにいつ帰ってくるのか分からない。ボクたちが寝たら帰ってくるみたいだけど、よく分からない。


 ボクは相変わらずママと離れるのが嫌だ。


 ママが大変そうだし、怒るから幼稚園までは頑張って行くけど、やっぱり玄関からは入れない。


 幼稚園がコワイー。


 でもママは毎日先生にボクを“お願いします”する。ボクは先生に抱えられて引き離される。


 何でボクは幼稚園に行かなきゃ行けないんだー!


 行事は年少さんのとき一回してるけど、やっぱり嫌だ。全然やりたくない。お部屋に入るのも嫌。ご飯もお友達と食べたくない。先生が“こうして”っていうのもどうすればいいか分からない。制作が全然できない。


 夏休みが終わってしばらくしたら、先生とママが二人でお部屋でお話していた。

 ボクは一緒に聞きたかったけど、ダメって言われたからちゃんと待ってたよ。


 終わってからママに先生とお話したことを聞いたけど、よく分からなかった。ママはちょっと悲しそうな顔してるように見えた。


 それからしばらくしてママに「病院に行こう」って言われたの。ボクは注射は嫌だなーって思ったけど、どうやら注射じゃないみたい。よかった。


 病院に行って先生とお話して、“やってみて”っていうことを色々やって、後は看護師さんと遊んでた。


 病院はコワイ所じゃなくて楽しい所だった。


 それからボクはママと一緒にたまに病院に行くことになったんだ。この前の先生じゃない先生とママと3人で遊ぶ。ボクはここに来るのがとっても楽しい。先生はいっぱい褒めてくれるし、ママと一緒に遊べる。ここだとママは怒らないし、ママも褒めてくれるんだ。


 しばらく通ってたら何人かのお友達も一緒にお勉強するようになったよ。お友達もお母さんと一緒だ。

 そしてやっぱりいっぱい褒めてくれる。人数が増えたって大丈夫。だってママと一緒だから。


 *


 年長さんになったよ。


 年長さんになったばっかりの頃は、先生も新しいから、ボクはやっぱりドキドキして幼稚園に行くのが少しコワかったけど、年少さんや年中さんの時ほど嫌じゃない。


 行事ももう3回目だから、なんか楽しくなってきた。


 ママは仕事で迎えに来るのが相変わらず遅いけど、お友達といっぱい遊べるから遅くても平気。

 むしろ遅い方がいい。だっておうちに帰っても、ママはやっぱり忙しいって言って遊んでくれないから。


 でも最近“おとうと”とちょっと遊べるようにもなってきたんだ。おとうとはいつもボクの後を付いてくる。そしてボクの真似をする。


 “おとうと”って、最初は全然分からなかったけど、やっと分かってきたよ。


 ボクのおうちは4人家族なんだ。


 幼稚園でおとうとのお世話をしたら先生が褒めてくれる。おうちでお世話したらママが喜んでくれる。おとうとも笑ってる。

 皆が笑うとボクは嬉しい。


 お泊まり幼稚園も行けたんだ。

 皆でスイカを食べた。夜ご飯のお当番さんもした。夜遅くまで皆と遊んだ。そして皆と一緒に寝た。


 あんなにコワイと思ってたお友達は、全然コワくなかった。


 今はお友達、皆いた方がいい。


 お友達はボクのこと助けてくれる。ボクが出来なくて落ち込んでたら、お友達が手伝ってくれたりもする。そして一緒に笑ってくれる。

 それからボクはお友達に負けたくないと思うようにもなった。勝ったら嬉しいから、ボクは頑張るんだ。

 1番飛ぶ飛行機を作りたいし、かけっこだって負けたくない。


 もちろん今はちゃんとお友達がいっぱいてもお部屋に入れる。朝の会も全然平気。

 だってお友達は本当に“お友達”になれたんだもん。



 ボクはもうすぐ小学生になる。


 小学校まで歩いて30分かかるけど、自分で歩いていかなきゃいけないんだ。もちろんママはいない。


 でもボクはもう大丈夫。ちゃんと行ける自信がある。


 ランドセルは届いた。制服も買った。算数ボックスは面白そうなものがいっぱい入ってる。


 大丈夫!きっと教室に入れるし、先生にも元気に「おはようございます!」って言える。そして新しいお友達にも。


 明日はいよいよ入学式だ。

 ボクはもう泣かないよ!




 **Period**

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おはよう!おひさま⭐︎ ニ光 美徳 @minori_tmaf

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ