あといっぽ

鈴ノ木 鈴ノ子

あといっぽ


 私はあといっぽがたらない。


 勉強していてもあといっぽが足らない。


 結局、すべての試験は後少しのところで、上位へ上がることなく終わってしまった。


 部活動していてもあといっぽが足らない。


 結局、大会メンバーに選ばれることはなく、万年補欠のように終わってしまった。


 受験でもあといっぽが足らなかった。


 結局、第一志望に受かることは叶わずに、第二志望で過ごすこととなった。


 恋愛でもあといっぽが足らない。


 結局、大好きなあの人へ告白は叶わずに、終わってしまった。


 就職でもあといっぽが足らなかった。


 結局、ことごとく面接は落ちて、最終的に労働時間が長く給与の少ない会社へと入ってしまった。




 あといっぽ




 あといっぽ




 あといっぽ




 常に私にはあといっぽが足らなかった。




 あといっぽなのに




 そのあといっぽがない。


 


 私は今日もまた、あといっぽが足らないことを思い知った。




 最後でもあといっぽが足らなかった。





 結局、ビルの屋上から自らからの飛び降りではなく、躊躇いの合間に風に吹かれて落ちた。



 あといっぽが…




 あといっぽが…



 


 あといっぽが…





 やはり、あといっぽがたらない。




 落ちた私の片足だけが何処かで千切れて、いっぽうがたらない。





 結局、また、いっぽがたらない。






 ねぇ、あなた、いっぽがたらないの。






 ねぇ、いっぽがたらないの。






 だからそう・・・そのいっぽう、もらってもいいよね。






 私にそのいっぽ、ちょうだいね。

 

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あといっぽ 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki

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