第3話 築き上げた奇跡
持っている者ほど貪欲に、さらに欲しがり欲望は膨れ上がっていく。
裕福な者程欲深く、何かを手に入れる為に対価が必要だと知っている。
大きな力、欲望を満たす為には、更に大きな対価、犠牲を受け入れる。
死の神の教えは貧乏人よりも、富裕層、権力者たちに受け入れられる。
各地で見つけた奇跡の力。
他人の心を操る指輪。
凶暴になり、辺り構わず暴れるようになる呪法。
魔物を使役する邪法。
それらは何人もの魂、憎悪に染まった魂が必要だったが、邪教に魅入られた信者達は、我先に飛びつき代償を払う。
己の欲望を叶える為、邪魔な人間を始末する為、罪もない人々を殺し魂を捧げて、自分勝手な欲望を叶えていく。
富裕層が信徒に多いので、表に出ない割に教団の資金は潤沢だった。
その信徒のコネと教団の資金を使い、教会でも駆け上がっていく。
権力を持つ者は勧誘して信徒に、邪魔な者は呪法で消してのしあがる。
「順調ですなカルロ様」
教団の連絡役、ロレンツィオだ。
「その名で呼ぶな、捨てた名だ。ここからは簡単ではないぞ」
教会で司祭となった俺……いや、私の部屋で会っていた。
「そうでした申し訳ありません。ところで、やはり法王は長くないようです」
「そうか、枢機卿も死にかけの老人ばかりだしな」
「無理に手を下さなくても、邪魔な枢機卿も法王も我らが神の元へ召されるでしょう。そうなればカルロ様が次期法王へと」
「まぁ、そうもいかないがな。聖女には現状、手が出せないし、大司教のパオロは取り込めない。あいつは本物だ。本物の狂人だ」
「確かにパオロは狂信者と言っていいでしょう」
奴は本気で光の神を信仰する変態、死にかけの法王ジャコモよりも厄介だ。
次期法王と言われるが、このままなら間違いないだろう。
その下の四人の司教。
法王よりも古いといわれる老人フランシスコ。
長く司教を務めているが、逆に言うと長年昇進もしない男だ。
全てに干からびていて、欲望もない面倒な男だ。
取り込んだところで役にも立たないだろう。
若くして司教となったラファエル。
教会期待の青年で将来は法王確実ともいわれている。
噂だけだと否定できない清廉実直で、非の打ち所がない青年だ。
もしかしたらヒトではなく魔物か魔族なのではないだろうか。
こいつは取り込めない。
既に取り込んだ司教の一人サンドロ。
司教の割に欲深い男で、簡単に寝返った。
こいつを次の大司教にする予定だ。
サンドロの内面を知る者は、教会内にはいない。
大司教へ推薦すれば間違いないだろう。
もうすぐ空く法王の座。
次の法王は、ある程度私の自由になるが、誰にするか。
「先ずは手駒を増やす」
「では教団から誰か呼びますか?」
「いや、一人心当たりがある。実力は文句ない男だ」
私はロレンツィオを王国へ派遣する。
そこで奴は傭兵をしている筈だ。
盗賊まがいの傭兵をしていた頃の知人だった。
元は、どこかの貴族の子息だったらしいが、どうでもいい。
あいつ程強い男を見た事はない。
正統の剣術の腕前は大陸一ではないかと、勝手に想えるほどだ。
この国の闇、暗殺機関祭祀。
表向きは祭事を執り行う者とされている。
前身の分からない謎の男ジュゼッペ。
今はその男が、何人いるのか判らない暗殺者を束ねている。
法国として、教会として邪魔な者。
危険だと判断された者、教会の敵を人知れず始末する。
それが祭祀と呼ばれる機関だった。
命令できるのは大司教のみ。
実態は法王ですら把握していないといわれている。
途中ですが、ごちゃごちゃとしてきたでしょうから、頭の中の整理用に本編210話現在の法国の主要人物ご紹介です。
法王 マヌエル
聖女 ロレーナ ソフィア クラウディア 故)アーシア
相談役 枢機卿 ジョルジョ ロレンツィオ レオナルド
大司教 サンドロ
祭祀 ジュゼッペ 故)ジョゼフ
司教 ラファエル フランシスコ モニカ
ついでに短編3話現在の状況です
法王 ジャコモ(老衰で死にかけ)
聖女 ソフィア クラウディア アーシア
死にかけ老人枢機卿 ジョルジョ ロレンツィオ レオナルド
大司教 パオロ(光の神を信望する狂信者)
祭祀 ジュゼッペ
司教 サンドロ(欲深い男)
司教 フランシスコ(何故か昔からいる老人)
司教 ラファエル 誠実な青年
その他……
このまま内部から教会を腐らせ、信仰の対象を死の神へ変える。
光の神とすり替え、一気に信者を増やせるだろう。
死の神に与えられた私の使命。
信者を増やし、この世に死と混乱を。
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