第7話 ジャム

 家庭科準備室で舞と明日香は昼食をとっていた。

 舞はお気に入りのメロンパンではなく、食パンを持ってきて、家庭科準備室にあるトースターを引っ張り出してパンを焼いている。香ばしい匂いが部屋を満たす。


「パンの焼ける匂い好きだなぁ〜」


 かぐわしいパンの匂いをかぎながら、舞は鞄の中から、瓶を三つ取り出した。鮮やかな色のジャムが黄金色の蓋で閉じ込められている。


「イチゴ、マーマレード、モモを持ってきました!」


 机の上で透き通ったジャムが太陽の光を受けてキラキラしている。カラフルな色が美しい。

 チーン、とトースターの音が鳴った。


「ぁ、あつっ! あち、ちっ!」


 焼けたパンを両手で跳ねさせながら白皿の上に乗せる。黄金色の焼き目には模様がついている。

赤いイチゴのジャムをパンの上に乗せる。ドロリと赤い宝石が光る。

 わぁ、と顔を輝かせて舞は頬張った。


「すごく美味しい! あすちゃんもいる?」

「えー、じゃあ私はマーマレードにしようかな」


 透き通ったオレンジのマーマレードをパンに塗る。舞をまねて、厚切りの食パンへ豪快にかぶりつく。ふわふわのパンに歯形を作る。

 パンの優しい甘さとは別にマーマレードのどっしりした甘さとほろ苦さが口の中に広がった。まいが喜んで食べるのもわかる。パンの香ばしさが最高だ。


「めっちゃくちゃ美味しい!!」


 そうでしょう、そうでしょうと鷹揚に舞が頷く。舞はパンを小さく切り分けてその上にジャムを乗せて食べていた。


「玄人はこうやって食べる〜」


 そう歌うようにいいながら、一つ一つを味わっている。なくなりかけたら、明日香がパンを焼く。あっという間にたくさんあったパンが消えた。

 なくなったと認識した途端。


「……食べすぎちゃった」


 苦しい苦しい、と舞は唸る。そんな舞に呆れ、仕方ないなーと苦笑する。


「ほら、おいで。ここに頭おいて横になりなよ」


 と、膝を指さす。椅子を並べた簡易ベット(寝心地は悪い)に舞は横たわり、頭はもちろん明日香の膝の上だ。

 苦しむ舞の頭を撫で、昼食タイムは終わった。

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