第4話 お菓子

 補習終わりの舞がぐちぐち言っていた。「私は日本人だ」「私に英語は必要ない」「英語嫌い」「英語使う機会ない」「海外怖い」「英語やだ」という話を延々と繰り返していた。

 購買で買ったポッキーを食す。いちご味、ミルク味、アーモンド、期間限定のレモン味、キャラメル味、細いやつ、と各種まとめて買った。明日香はいちご味が好きで、舞はミルク味が好きだ。


 ぱきぱき折れる音。ミルク味のポッキーを食べながら、ずっと舞は文句を言い続けている。


「期間限定のやつ食べなよ」

「むっ」


 せっかく買ったんだから、とすすめると舞は黄色いレモンの書かれた爽やかなパッケージをあけ、そそくさとハムスターのように食べはじめた。

 嬉しそうに食べている舞を見ると、明日香は可愛いなと思う。

 切り揃えられたショートカット。どんな路地の狭い道も通り抜けられそうな肩幅。小さな唇。

 ハムスターのように無言でもぐもぐ食べ、小さな口の割にメロンパンを大きく頬張る。


「レモン美味しい!!!」


 一本食べ終えると、嬉しそうに瞳を輝かせて舞はいう。言い合えるとレモン味のポッキーを貪り始めた。

 そんなにいうならと明日香もレモン味を手に取る。


「あっ、ほんとだ。めっちゃ美味しい」


 甘いチョコレートにレモンの爽やかさが加わり。いくらでも食べれてしまいそうだ。

 二人してレモン味のポッキーをひたすら食べる。無言で食べる。競うように次から次へと手を伸ばす。


「……あ」


 残りの一本。気づいた舞は戸惑っている。どうしよう。食べたい。けど、あげるべき。待っててくれたんだから。うーん、でも食べたい。

 百面相をしながら熟考している。考えがぐるぐると回っている。

 しかし、急に名案が思いついたとばかりに顔を輝かせた。


「ポッキーゲームしよう!」

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