第3話 雨

 雨が降っている。舞は英語の補習でいない。先日の小テストは散々な結果だったようで、ほとほと英語教諭が呆れ返っていた。

 玄関口の前でポツンと明日香は立っている。大粒の雨が降る。突っ立っている明日香の横を学生たちが避けて帰っていく。

 色とりどりの傘だ。雨粒を弾く音が耳にこだまする。傘を持っていなかった。明日香はニュースを見ない。天気予報をわざわざ確認もしない。なので、滅多に傘を持ち歩かないが、お気に入りの傘はある。


 湿気で髪の先がうねっていた。猫っ毛だから、これからもっとぐねぐねうねうねし始めるだろう。

 じっと雨を眺める。どっしりと重たい暗い雨雲が果てなく続いていた。しばらくやまない様子だ。いつもなら校庭で野球をしている生徒も、屋内で練習をしている。「一、二、三……」と数を数える声が背後から届く。


 学校にいるのは居心地が悪い。だけど、雨に濡れて帰るのも嫌だ。そんなことをぼんやり考え、踵を返した。


「……舞がいるなら悪くないか」


 補習を邪魔するのはよくないから、家庭科準備室に行こう。靴を履き替え、湿気で滑る床の上を歩く。帰宅する生徒たちはあらかた帰っていて、遠くで楽器の音が聞こえる。やっぱり居心地が悪い。

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