第24話 その流れ、もしや誰かの遺言
餃子の食べ過ぎたろうか、むしろいらんことを考えすぎたせいだろうか、夜中おなかが痛すぎて、救急外来にタクシー飛ばしていったら入院になった。
「一日二日で帰れますから、安静にしていてくださいね。」
ずっと点滴で、おなかは定期的に痛くなって、医者曰く熱も下がらないらしく、言われるまでもなく安静にしていた。むしろ動けと言われても無理。
貴重な夏休みを病院のベッドの上で過ごすか。これはもしかしてストレスレスなのではなかろうか。親にも帰省したという義理を果たし、うっかり会ってしまうとめんどくさい相手とも距離が取れる。
「先生、面会謝絶にしてもらえませんか?」
「それは無理。」
「ですよね。」
「誰にも会いたくないって言ってます、くらいならナースステーションで言ってもらえるけど。」
「そうしてもらえるとありがたいです。しんどくて来客に気を遣えないです。」
とにかく、会いたくない。次に会ったら「絶交と結婚とどっちか選んで。」っていうしかない。もう疲れた。胃腸も今回疲れたって、はっきりアピールしてるわけだし。
すると廊下から聞きなれた声がする。
「面会室で待ってます。」
おいおい、誰が誰を待ってるって?声が阿須賀だから、阿須賀がこの病院の関係者のだれかを待ってますってことだよね。
「竹中さ~ん、ご主人面会に来たわよ。いつものお部屋に来てるから。」
「わかりました。ありがとうございます。」
ご主人。
この人が、阿須賀の奥さん。
入院してたから、阿須賀の生活が全然変わらなかったのか。
声しかわからないけど、少し嬉しそうな感じが伝わってくる。
長いこと入院してて、もしかしたらこれからも長く入院してなきゃならないかもしれなくて、楽しみはご主人の面会。だとして、そしたら、
『あの女と別れて私と結婚して。』
これ、言いづらい。すごく言いづらい。
いい人のふりするわけじゃないけど、もしまかり間違ってそうなったときの罪悪感が半端なさそう。自分がかわいそうな側で、相手を罵倒し続けてるほうが数倍ラク。自分が責められる側に立つって、相当覚悟がいる。
なんてことだ!
なんて状況なんだ!!
なんで阿須賀はこんな大変な人と結婚したんだ!!!
っていうか、だったらもうほんとに私にかまわないでくれ!!!!
胃痛がひどくなって、入院が一日伸びた。
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