第21話 もう、夏だわ

「あんた、学生は夏休みだってのに、なんで帰ってこないの?」

はい、ごもっとも。


「お盆休みに帰るよ~。バイト先の夏休みと合わせてるんだって。」


美大生になって四か月、いったいなんだったんだろうという日々だった。

阿須賀とこんなに頻繁に会ったり電話したり、言ったら実家にいる時よりコミュニケーションとってるような状況で、もはやどうしろと?


「お母さん、阿須賀って、結婚してたんだってね。」


いつ帰るかの電話で、うっかりぽろっとそんなことを言ってしまった。


「え?そんなこと聞いたことないけど、お母さん。阿須賀君今も隣に住んでるし、お嫁さんが来たって話も聞いたことないわよ。」


「だって、本人がそう言ってたんだけど。単身赴任なのかな、奥さん。」


「まさか。からかわれたんじゃないの? いきなり遠くへ行っちゃって、つまらないって阿須賀君言ってたし。」


「そんなこと言ってんの?」


「そんなことより、何日に帰ってくるの? 夕飯食べるとか食べないとか、ちゃんと教えてくれないと、親戚だって遊びに来るんだし。」


・・・阿須賀って、私がいないとつまんないんだ。


そんなことでほくそ笑む自分がもうめんどくさい。


だから、誰と結婚してんのよ。


どうせ顔合わせてしまう帰省なんだから、そこんとこはっきりしてもらおうじゃないの。


とりあえず、新幹線のチケットをネットで予約した。

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