第19話 暑い、外も脳内も
「あれ、高田さんもそのアプリ使ってんの?」
面倒なやつに見られた。浜守め、神出鬼没だな。
「初恋の君が収集つかなくなってきたから、もっとかっこいい人探すことにした。」
「え〜、あいつらじゃだめなの?」
「あいつら言われましても、私誰だかわかんないもん。」
「ほんとにわかんないの!?」
「ん〜、至近距離30センチまで近づいてくれないと、人のことってよくわかんないな。」
「じゃ、俺は?俺でいいじゃん。」
「浜守くんかぁ。弟と同い年っていうのは、なかなかハードル高いんだな。」
「弟にしか見えない?」
「ん〜、そういうわけでもないかもなぁ。」
「じゃ、加藤でいいじゃん。」
「お互いにいい自分を見せようと頑張って、1ヶ月くらいで疲れ果てて悲しい別れが待ってそう。」
「じゃあ、理想のタイプとかってあるの?」
「鈍感で天然で、少しシニカルな人。」
「水曜9時の、刑事ドラマの人みたいな?」
「ああ、そうかも!」
っていうか、まんま阿須賀じゃん。
あれ?浜守くん、加藤くんの前に自分を推薦したけど、他意はある?
もしかして、
「その、例の4人の中に、浜守くんも入ってんの?」
「えっ?それいま言う?今気づく?」
「ほんとに〜?うわあ、びっくり。」
「そこまで驚かれると流石の俺も傷つくけど。」
「人から好意向けられて、重くないの初めてだから、それでびっくりした。」
「いつも大変なの?」
「うん。だから、今でも冗談で言ってるんじゃないかって思う。」
「軽い?」
「うん、いい意味で軽い。」
「 …… 褒め言葉として聞いておけばいいんだね。」
「 …… うん。」
加藤くんの好意に気づいた時は、とにかく逃げなきゃと思ったけど、浜守くんはそうは思わなかった。彼は、何があったとしても、他人のせいにする人じゃないって思ったからだろうか。
大袈裟にため息をついて、少し苦笑いをして、浜守くんは次の教室に向かって行った。私は、ダウンロードしたてのマッチングアプリを眺めながら、その先どうするでもなくぼーっとしていた。自分も授業に出なければならない。選択に困った時はどうするか。
「全部とる!それができないなら全部捨てる!!」
とにかく、アプリの出番はなさそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます