第16話 感謝もしなくちゃいけないね

阿須賀のことを、ああだこうだと罵倒してきたわけだけど、助かってた部分もあったんだと、昨日初めて気づいた。


ちょっとお高く聞こえてたら失礼いたしますけれども、私の「阿須賀大好き!」設定は(いや、設定って言っても真実ですけどね)、男よけになってたんだね!


例えば、

「俺、前々から高田さんのこと好きだったんだ。放課後呼び出そうと思って。」

「やめとけ、あいつバカみたいに阿須賀のこと好きらしいぜ。」

「あれ?ただの幼馴染って、本人言ってたの聞いたことあるけど。」

「彼女じゃないけどさ、毎年告白して振られてるって。」

「まさか。」

「俺、中学校一緒でさ。」


っていうバリアーがあったから、どんなに私が雰囲気美人でも、しつこく言い寄ってくる人がいなかった。離れ離れになった高校時代でさえこうだったわけで、大学時代は阿須賀本人が存在していたから、楽しい大学生活を過ごしたい健康な若者たちは、私というエベレストに敢えてチャレンジしようとする人はいなかった。


だがしかし、今はどうだ。


丸腰である。


大好きだった初恋の君に失恋し、傷心受験からの時々泣いちゃう女の子を好きになったら、そりゃあまあ、


「俺が守る!」


みたいに盛り上がってしまうのではなかろうか(萌:調べ)。


いらない〜っ!

今、ほんとにいらない。

本当に必要なのは、例えば何を喋っても「うんうん」って優しく聞いてくれる、

そう、


「さくらさ〜ん!」

「萌ちゃ〜ん!」


「なんでバイトの挨拶に、毎度毎度10年ぶりの再会みたいに叫んでんだよ。」

「大将〜!おはようございます!!」

「もえ、今日なんか鬱陶しいぞ!」

「いつもです〜。」


そう!これ!!

バイト来てる時が、一番気を遣わなくていい。

さくらさん、こんな私を癒してください。


「萌ちゃん、どうした?なんかお疲れ?」

「さくらさん、大学が大変です。」

「相変わらず勉強難しいの?」

「それも大変だけど、女の子の友達ができません。無理して作ろうとは思ってなかったんだけど、女の子の友達いないのに、男の子の友達ができるはずがないですよね。」

「え?男友達が欲しいから女の友達も欲しいの?」

「そうじゃなくってですね、男の子と知り合いになって、私は友達になりたいけど、その子は多分私とは彼氏彼女になりたいような雰囲気で、その原因って、女友達がクラスにいないってこともあるのかな、と。」


さくらさんは、う〜んと腕組みをして一つ唸った。


「それ、まったく関係ないと思うよ。_

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