第14話 今さらながら、今後の身の振り方について
遠く離れてしまえば、幸せに暮らせると思っていたけど、全然そうはなっていないわけで、少し今後のことを考える必要があると思い始めた。思い通りにならない。
まったく思い通りにならいない!!
そう、遠く離れてしまえば、もう阿須賀に関する情報は入ってこないはずだから、情報を更新する必要はない。よって、美しい脳内妄想を保ち続けていられると思っていた。なのに、なのになのに!
入学式から花束持ってくるは、金魚の松子が死んでからは毎週土曜日電話がかかってくるは、おまけに突然もう結婚してるとか一番いらない不意打ち情報ぶっ込んでくるは、
入学金と授業料と引っ越し代を出せ!!
「ここ、いい?」
「ああ、玉森くん。」
「俺、浜守、それそろそろわざとだろ。」
……わざとです。
「こいつ、加藤。広告学概論同じだから、顔ぐらい知ってるだろ?」
顔ぐらいは知っている。
「あ、こんにちは。」
「こんにちは。」
少し緊張している感じの彼は、おそらく浜守くんがこの間言っていた4人のうちの一人なのだろう。でもいいのかね。あなた20歳でしょ。私25歳だけど。あ、もしかしてこの年代って、むしろ年上に興味あるのかな。
「高田さん、難しい顔してなにやってたの?」
眉間にシワぐらいよってただろうね。
「いろいろと計画通りにいかないから、ちょっと今後のことについて考えていたのよ。」
「就活?」
「それもある。」
しかしその前に、この学生生活そのものについても疑問が生じているわけよ。
「わたし、デザイナーになれると思う?」
「そんな根本的なとこで悩んでたの?まだ6月なのに?!」
そう、まだ6月。
この学校この学部は、面白そうだし受かりそうだし、そして何より遠いし!!といって受けた学校なので、実はその先のことなんて何にも考えてない。しかし「遠い」という利点がまったくもって利点として機能していない今、私はここでのんびり学生をやっている場合なんだろうか。前の仕事も好きだったし、実は給料もそこそこ良かった。なんか、いろいろ大切なものを捨てて今を迎えているのに、なんだか失うばかりで私は単なるバカじゃないのか。
「なれると思うよ。」
いままで、ずっと黙っていた加藤なにがしが、突然口を開いた。
「俺、高田さんのWebデザインの色使い、すごくいいと思う。」
あ、ほめられた。
すごく嬉しい。
すごく喜んでいる自分に、自分で驚いた。
それだけ、自信がなくて、後悔ばかりが押し寄せて、どうやってやめるかばかり考えていたけど、もしかして私がいてもいい領域?そう思ってもいい?
「高田さん!どうしたの?」
浜守くんが慌てている。
気づかないうちに、涙がスカートに落ちていた。
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