第11話 どうにかしよう、どうにか
「松子の49日やるから、実家来いよ。」
「お寺でやんの?」
「松子みたいな小さな子は、俺が心の中で送ってやるんだよ。」
「じゃ、阿須賀が心の中でひっそり送ってやればいいじゃん。」
「冷たいな。二人で育ててきた松子だろ?」
誤解される、阿須賀、だから誤解されるんだよ、ほら。
土曜の23時30分、松子が死んでから頻繁に電話が来るようになった。よっぽどこたえたんだろう。わかる、わかるよそれは。でもこの頻度はなに?個人的に仲がいいとか良くないとかを超えて、松子のことだから?松子を分かち合えるのは私だけだから電話がくんの?
いや、私じゃなくてもいいんだよ。阿須賀、もし勘違いしてるなら今からでも試してみるといいよ。
「阿須賀、松子いなくて寂しいんだったら、そっちに住んでる友達とたくさん会ったらいいんじゃないの?ってか、阿須賀に会いたがってる子いっぱいいるよ。」
こんなに離れてる私に近況聞いてくるとか、阿須賀の周りもおかしい。だって、歩いて3km圏内に住んでるんだよ、大体。中学校が同じって、そう言うことだからね!
「だって、松子がどれだけ可愛いか知ってるのは、もえだけだから。」
いや、それも微妙に違うから。私は、松子がかわいいと思ってたわけじゃないよ。ぷっくりして愛嬌あるな〜とは思ってたけど、どっちかっていうと、笑わせてくれる面白いやつ、って思ってた。ただ、阿須賀が、すごくかわいいって思ってたことは知ってる。だって阿須賀がかわいいかわいい言うから。
「それはね、阿須賀が『松子ってカワイイんだよ』って私に教えてくれたから私が知ってるだけで、見てたから知ってるわけじゃないよ。だから、阿須賀が松子をどれだけかわいかったかみんなに話してあげればいいんだよ。」
「もういないのに、伝わらないよ。」
「あんたの待ち受けとか松子フォルダの写真とか見せてあげたらいいんだよ。それで、阿須賀の思いをとうとうと語れば、伝わるんだよ!」
「 …… 」
話してる途中から、ああ、阿須賀は誰にも松子のことは話さないだろうなと言う気がしてきていた。松子が大事というのもさることながら、阿須賀は自分の持ってるイメージを崩したがらない。少し作ってるところもあると思う。人間なんてそんなものだと思うけど、自分の思う阿須賀として生きる時間と、松子との時間は、どうにも重ならないということなんだろうな。もしかして。
「松子の話ができる人見つけないと、あんた一生結婚できないよ。」
もうため息つくしかない。誰かと結婚して私に諦めさせてほしい。もし結婚しないならしないで、大声でそれを表明してほしい。とにかく私に落ち着かせてほしいんだよ!
「大丈夫、もう結婚してるから。」
急に小さくなった声で、阿須賀が言った。
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