お久しぶりです。

 まず一言、申し訳ない。ここ1ヶ月弱何一つとして小説を更新していなかったこと深く申し上げる。そしてお詫びに今回はいつもより文字数を多くする試みです。


「ねー!今日暇?」


「うんまぁ」


 もう夏はすっかり姿を消し、半袖半パン小僧の出現率も落ち始め、空は女の心模様になり始める。秋特有の少し乾いた空気の中、俺の刺客こと夜道 桜がいつものように遊びに誘う。


「最近できたカフェ行かない?美味しいらしいよ!」


「カフェか、いいよ」


 俺はバイトの新しい成長にもつながると考え珍しくすぐに返事をした。


「やったぁ!」


 高一になっても、バカがはしゃいでいるところを見ると少し幼さを感じられる。学校をたった20文字で終わらせ、放課後になる。


「このまま帰り道による?」


「いや、金取りに帰りたい。」


 バイトのおかげで少し小太りの俺の財布を持つ俺は、盗まれると言う危険と物をなくす不安から、普段は持ち歩いてイナイイナイバー。


 4時半に集合場所で空を見上げる。この季節になると空は青いはずなのに、快晴とまではいかず、どこか明度が引くよ言うに感じる。


「いたいたー!」


 手を振り返そうが迷ったが、可愛げなく全力疾走でこっちに向かってくる姿を見ていると背筋が凍った。


「どこのカフェ行くんだ?」


「ネットで調べたんだけど、『べとでぇいと弾む』ってとこ」


「どこだよ……ん?俺のバイト先じゃねぇか!」


 驚愕のあまり意図せずノリツッコミ的な感じになってしまったが今はそれどころじゃない。


 あそこは確かゆずるさんが半年前にオープンしたと言っていたはずだからこの桜とか言う人からしたら半年は最近の出来事らしい。


 いつもならここで話が終わるが増量キャンペーン中だ。お得だね!


「まぁ、うん、わかった。行こうか〜?」


 渋りながら返事をするもどうも気が乗らない。今日は確かゆずるさん、たわしことくるみさん、そしてジャムことジャムがバイトのシフトのはずだ。


 集合場所を決めていたと言うこともあってすぐに着いた。


カランカラン……


「いらっしゃいませ〜って誰だっけコイツ!」


 ものすごく無愛想ないらっしゃいませコールを頂いた俺は今すぐにでもいらっしゃらなくなりたい。ちなみにその発言元はくるみさんだ。


「あれ〜?影杉くん今日シフトあったっけー?」


 裏からゆずる先輩が顔をだす。


「すんませんないっす。今日はお客としてきました」


「そうなんだ!……ゲッ」


 俺の左後ろにいる桜を見た瞬間口から客にする発言ではない言葉が漏れた。


「あっ、形くんをビンタした人だー」


「形くん?君らどう言う関係?」


 ジャムも質問したいで質問の量がジャムっている。そして関係もメチャジャムだ。めちゃくちゃって意味ね。


「一応同級生で同じクラス」


「そして付き合ってる」


「付き合ってない」


「らしいです」


 テンポ良くジャムの質問に答え、案内された席に着く。メニューを眺めると案外客目線からだと新しい発見があることに気づく。


 これがカスタマーサイドに立つと言うことなのだろうか?


 俺はブランドコーヒー、桜はアイスコーヒー卵焼きマシマシを頼んだ。ちなみにうちのカフェにアイスコーヒー目玉焼きマシマシなんてメニューは存在しない。


「でさぁ〜、その子がねぇー」


 いつも通り桜の話を右耳で聞きながら左耳から出し、あたりを見回していた。今日は珍しくこの時間帯なのに俺たち以外に1人も客がいない。曜日によって違うのかと感心していると桜に「聞いてるのー?」とこれまたいつも通り訂正が入る。


カランカラン……


 噂をすればと言うべきだろうか。俺たち以外に客が入ってきた。


「いらっしゃいませー」


 4人が声を合わせる。そう、4人が、癖でついいらっしゃいませコールをしてしまった俺はいますぐにでもいらっしゃらなくなりたい。本日二度目。


 そんなことより俺は、いや、俺たちは客を見てそのままゆずるさん、ジャムと目線を動かす。


 あの恐怖の再来、ヤンキー竹中(竹中は今適当に俺の心の中でつけた)が来た。


 だが少し驚いたのは取り巻きが前とは変わっていた。というよりこの前の奴らが取り巻きになっていたと言う方が正しいだろうか。


 前は3人組だったが今日は5人組。5v 5だから人数差はないが、ガッチガチのムッキムキのバッキバキのヤクザレベルのやつが先頭だった。アレはやばい奴だ。


「空いてる席にお掛けください」


 くるみさんがビクビクしながら席へ案内する。俺はドキドキしながら席に座る。ちらっと桜の方を見ると明らかに「終わったぁ〜」と言う顔をしていた。申し訳ないが少し面白い。


 ヤンキーどもは席に着こうとしない、元々静かで落ち着いた安心感のある空間だったこのカフェだが今は大きな何かが起こる前の静けさがあった。


「竹中さん、ここっす、前俺の服を汚してくれやがったの」


「そうか、ちなみにドイツだ」


「ここは日本です」


「国名聞いてるんじゃねえんだよ。誰が汚したか聞いてんだ」


「プッ……」


 俺の正面で対して面白くないやりとりに吹き出したのはおかしいのに面白くないで有名な桜さんだ。てかヤンキーのボスが竹中なのかよすげえな俺。


 笑い声に反応しヤンキーの視線が桜に集中する、俺は申し訳ないがすぐ窓の方向を見る。


(あー、綺麗な空だなー)


「竹中さん、汚したのそいつっす」


 そう言って俺の心の中の竹中はゆずるさんを指差す。俺はまだバレていないようだ。これがカスタマーサイドに立つということか。


「ちなみにボコしたって言ってたガキはどこよ。こっちにもツラがあるんでねぇ」


 「なんのツラだよ」と心の中で呟く、心の中で、ここ大切だよ?


「いないみたいっすね」


 店員3人を順番に見ていき、答えるが残念ながら客としているんだよなー。これがカスタマーサイドに以下略、ということか。略せてねぇな。


「ならまぁいい、因みにお前だったよなぁ?服汚したとか言う無礼な真似した割には詫びすらもねぇ常識外れな輩はよぉ!」


 そう言いながらミシミシと音を立ててゆずる先輩に近づく真の竹中は明らかヤバいオーラを纏っていた。


「ヤバい……」


 心の中で一度呟き立とうとするが腰が抜けたのか全く動かない。恐怖で足がすくんだのだろうか。この前とはちがう、明らかに敵に回しては行けない奴と言う真実が俺をどん底までひき下ろす。


「ヒッ……」


 ゆずるさんは涙目で俺を見る、そして助けさを求めていた。でも、俺より3倍ほどのガタイの良さのヤクザに正面切って挑めるほど俺の肝は座っていなかった。


 あの時何度でも殴られると言ったが今ではそんなのただの思い上がりなのだと思い知った。


 ヤクザがゆずる先輩の胸ぐらを掴む。俺は見てないられなくて周囲に目を逸らす、くるみさんはその状況を慌てふためき見ている。ジャムに関しては目を強く瞑り、桜は下を向いていた。ヤンキーの腕が上がる、俺はその時咄嗟に遠距離武器で攻撃してしまった。


 何をしたかと言うと飲み掛けのブレンドコーヒーを思いっきりゆずる先輩とヤクザにぶっかけたのだ。マジ、マジで今後悔してる。


「スーッ、すいませーん、お邪魔しましたー、お釣り入りませーん」


 俺は今の机にお金を置き席から立ち上がる。

足はブルブル、胸はドキドキ、心臓バクバク、頭グルグル、状況はちゃめちゃ。マジもうぐちゃぐちゃ。


「コイツっす!俺がボコしたやろう!」


「あんま舐めたことしてんじゃねぇぞ!」


 凄いスピードの拳が俺の方向に飛んでくる、ヤクザの怖い顔を体を乗せて、でもその拳が俺に当たることはなかった。俺の目の前で、ほんと寸前で桜がパーで横から拳を握り止めていた。じゃんけんって殴り合いにも生かせるんだって初めて思ったよ俺。


「えっ……」


 ヤクザパニック、俺もパニック、ワニワニパニック。みんなびっくりした顔をしている。だって90キロ越えの全身全霊ヤンキーのパンチを、ヒョロヒョロの女の子が止めたのだ。片手で。


「私のダーリンに触るなっ!」


 そのあとヤクザこと竹中は1、2……3…………6回転したあと反対側の席までぶっ飛ばされる。殴ったわけではない。決め台詞と共に押し返しただけだ。


「何してんだよ!」


 残りの動けそうなヤンキーは2人、新しい取り巻きと、この前俺と激闘の末勝利を収めた竹中だ。竹中パニックじゃねーか。


「えっ、あーっと、たまたまだよっ」


 強いキャラを知られたくないのか桜は左手でチョキを作り左目に当てたあと右足を上げ、アイドルよろしくのウィンクをした。


 だがそれは油断そのもので偽竹中は桜に襲いかかる。俺は桜を押し出し2人とも倒れ込む。


 起き上がる時に見えた光景は恐ろしく、戦闘力の無さそうな2人がヤクザの意識確認をし、もう1人がゆずる先輩に襲い掛かろうとしいていた。


 しかしその思い届かずこれまた寸前で止められた。でも桜でも俺でもない、くるみさんに。


 くるみさんは手をパーの形にしたあと、指と指の間を閉めたようなカンフー映画らしい立ち姿でヤンキーのパンチを逸らした。


 その間ジャムはと言うと電話をかけていたので、救急車がパトカーが来るのは時間の問題だろう。


 俺は現在進行形で背中を偽竹中に踏まれている。しかし衝撃は与えまいと四つん這いになりながら桜を守る。これが男の意地ってもんだ。え、男の意地ダサ。


 なぜかその後はトントン拍子に事が進んだ。くるみさんがゆずる先輩を守りながらヤンキーを撃破、桜が偽竹中を撃破し、最後の悪あがきのヤクザのパンチは桜の背負い投げて勝負がついた。


 取り巻き2人は呆然としながら3人を担ぎドアから出ようとしたが、創作物特有のナイスタイミングで警察が登場した。


俺は床に腰をついたまま、こう呟いた。


「by to day 〜弾む〜が最強のカフェとしてテレビや新聞の一面を独占したのはまた別のお話」っと。これでオチがつく。つかないか。まあ、落ち着きはしたのでこれにて終了!

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