元カレ

「じゃあ、行こっか」


 優しい声に引っ張られ、可愛い先輩にリードされる。マジ俺幸せすぎんだろ。このままパリーピポー一直線だ。どこに何直線だよそれ。


「はい。まずはカフェでしたっけ?」


 わざわざ一緒に食べるためにこの時間にしてくれたらしい。そして紹介されたカフェは女子力満点のカフェだった。因みに俺は女子力0点。


「このカフェいいでしょ?私のおすすめ」


「いいですね!また「弾む」とは違った明るい雰囲気、盛り上がっちゃいますね」


 もちろんデートってだけで俺の盛り上がりはチョモランマおも遠に超えている。そこではサンドイッチやパフェを体に流し込んだ後、イキってブラックコーヒーを頼みちびちび飲む。


「君、ブラックコーヒー飲めないじゃん」


「バレましたか」


 流石はカフェの店長だ、人を見る目が違う。

よく分からない尊敬を胸に抱き、会計に進む。


「料金2,900円でーす」


「ここは俺が」


 ドヤ顔で親からもらった3体の野口秀雄を生贄に、100円玉を召喚した。


 「一応私先輩なんだよー。」なんて唇を尖らせて言うから少し、嘘、だいぶキスしたくなってしまった。


 そしてそれには「先輩はこの後の買い物に残しておいてください」と面白みのないセリフを投げた。匙は投げてない。


 その後はすぐ近くにあるショッピングモールで服を買う。もちろんあの定番の難問も出される。


「こっちとこっち、どっちがいいかな?」


 片方は優しい肌色のニット。もう一つは少し派手な赤のパーカーだ。値段的にはどちらもあまり変わらない。しかも冬用なので安かった。


「そうだね、俺はこのニットの方がゆずるさんに似合ってると思いますけどね」


「そうかなー」


「赤も華やかでいいですけどね。赤い服ってなんとか現象で魅力を上げるらしいですよ」


 必殺どっちも褒めとけ理論でなんとか状況を掻い潜ろうとする。


「あっ!ゆずっちじゃーん。」


 後ろから誰だろう?イケメン、高身長、お洒落なファッションセンスの持ち主が話しかけてきた。ゆずっち?栄光の架橋とか歌ってんの?


 うん。これ負けたな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る