友達?

「フッフ、フ〜♪へへ」


 「我ながら気持ち悪いと思う」単刀直入に言おう。俺は昨日、バイトの後ゆずるさんからデートのお誘いをもらったのだ。


 もちろん断る理由なんかない。あの絶世の美女、学校のマドンナ。学校知らんが。 かわいい、美しい、優しいの王道3つを打直球の女子大生のデートのお誘いだ。これはいくとこまで行っていいのでは?


 なんて学校の窓を吹き抜ける風にあおられ、何も書かれていない黒い板を見ながら考えていた。


「かったちくぅん!」


やけに読みにくい文字で俺を呼ぶのは、もちろん性別不……桜さんだ。


「おう!朝から元気だな!」


「いつの時代の先生?」


 なんてよくわからないツッコミをされた。友達経験の少ない俺はツッコまれた後何を言えばいいかわからない。


「てか顔あざだらけじゃん!大丈夫?!」


「あぁ、全然大丈夫なんだが、なんだその顔?」


 初登場の敵に驚く主人公のように、車に怯える子猫のように、俺をそんな目で見てきた。おいおい、なんか勘違いされてねぇか?別に喧嘩したわけじゃないんだからねっ!一方的に殴られただけなんだからっ!


「そう言えば形君、二学期始めも血だらけで学校きてましたよね。もしかして、いやもしかしなくても、形君ってヤンキーだったりします?」


 当然と言えば当然の勘違い、さっきは温かかった、窓から入る風が、今は「残念」と煽っているように感じる。


「ヤンキーじゃねぇよ。てか相談聞いてくれ。俺の数少ない女子友達として!」


「少ないとかじゃなく1人じゃないですか。友達も」


「そうなんだが、俺さ、日曜日にデート誘われたんだけどよ。俺そんな経験初めてなんだわ。頼むからアドバイスくれよ!」


「形君。嘘はついてもいいですけど、自分が悲しくなるだけですよ?」


 至って真面目だ。


「ちょっと待ってください。ほんととか言わないですよね?」


「うん、本当」


 細かった目が2、3倍に開き、顔を真っ赤にする。そして後ろには「ガーン」と言うオノマトペがありそうなテンションで肩を落とす。


「形君。私たちって友達ですか?」


 俺はこの質問に、なんと答えれば良いのだろう。しっかり難問っ!

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