決意

「だからさぁ、どうしてくれんのって話ー」


「ちょっと、流石にまずいよ」 


 リーダー格に真面目君がたまに入る。リーダーは店の空気を感じ取ったのだろう。「ちょっと表でろや」だの言って腕を引っ張る。


「その手、離してください」


 俺はゆずるさんを掴んでいるヤンキーの手をグッと握った。腕か。手は握ってないよ。恋が始まっちゃう。


「あ?関係ないやつがでしゃばんなよ?」


「その手、離して下さい」


「チッ、それしか言えないのかよ。悪いのはあんたらだろ?」


「その手離せって言ってるだろ!!」


 とりあえず威圧感を振りまく。声をこんなに荒げたのは久しぶりだ。もしかしたら初めてかもしれない。追い討ちのように掴んだ手に力を込める。


「クソが、ちょっと来い」


 ゆずるさんの腕を離したヤンキーは店を出る。残りのオマケどもは「やり過ぎんなよ」とか、「流石にやばいよ」とか言ってたが特に行動に起こすことはなかった。


 俺はとりあえず店に居させては行かないと思い、ヤンキーの言う通り店の裏へ出た。


「調子乗ってるよな!」


 急な暴論と共に、拳が飛んできた。もちろん50メートル8.4の俺は避けることもできず一発でかいのを顔にもらった。


「おいおい,大口叩いて威圧感振り撒いてる割には、大した方ねぇなぁ」


「フッ、お前こそそんなムキムキな割には一発KOできてないじゃねぇか」


「痛ぶってなんぼだろ?」


 これを聞いてわかった。コイツはやばいやつだ。誰も通らない薄暗い細道。風の吹き抜ける音だけが、耳に入る。その風は2人の間を縫うように通り抜け、恐怖だけを置いていく。 


 その後も何度も殴られた––––––––。


「も、もうやめませんか?」


 もう何回殴られたかも覚えていない。今回で25回目だ。覚えてんじゃねーか。なんてふざけてないとやってられない。


「これぐらいにしといてやろう」


 すれ違いざまに顔面にお土産として膝蹴りを一発かまされた。


 その後ヤンキーは連れと一緒に姿を消した。

俺はと言うと店に戻った時には状況を察したらしく、勇者だなんだと称された。女の子に称されると言うのは悪くない。

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