これがラブコメ展開か

「いらっしゃいませー」


 ちょっと混んできたな。今日もバイトは俺とジャム女、そしてゆずるさんの計3人だ。少し人数が心もとないが、注文はコーヒーやちょっとしたデザートなので店は回る。


「影杉君、ちょっといい?」


 ゆずるさんに呼ばれ、脅威のスピードでそっちに向かう。


「ちょっと混み始めたから、注文の時は時間かかるって言ってね」


「はい、分かりました」


「あっ」


 こんでいるにも関わらず。ジャム女がずっこけた。


「影杉君、向こうに雑巾あるから持って来てくれる?」


「了解です」


 今きた客に出すお冷だったので特に問題はない。直ぐ雑巾を取りに行き、ジャム女に渡した。


カラン、カラン……


 混んでる時にいかにもチャラい、ヤンキーレベル1みたいなのが入って来た。ヤンキーレベルってなんだよ。


「お好きな席にどうぞ。ご注文お決まりでしたらお呼び下さい」


 もうバイトを始めて3時間半。流石に噛まない。さしゅが俺。


「俺コーヒー、ブラックな」


「ブラックとかやりますね。俺微糖で」


「じゃあ僕はカフェオレで」


 チンピラどもは3人組、ムキムキのヤバそうなやつが2人と、どう言う関係かは知らんが、共通点のない、ノーマルマンが1人の計3人。

3対3だから数的不利はない。これならドン勝ついけるな。


「混んできたし私も動くは」


 ゆずるさんの起点の効いた行動のおかげで少し店回りが良くなった。流石店長だ。


 だと思ったのも束の間、ゆずるさんも同じところでかけてしまった。それが運悪くチンピラ集に掛かってしまった。


「おいおい,どうすんだこれ?割と値段するんだぞ」


「申し訳ありません。料金はいただかないので」


 ゆずるさんが全力で謝る。バイトの俺たちは特にできることもない。


「そう言う話じゃないんだなぁ!これじゃあ外出れねぇってことだよ!」


 1番ヤバそうなやつが声を荒げて、ゆずるさんの手を掴む。店内の空気が凍る。店内全員の視線が集まる。


「ねぇジャム!」


「どうしたジャム」


「多分私が水こぼしたから、滑ったんだわ」


「だろうな」


「助けてあげて」


「言われなくても」


 俺は助けると決心し、震えていた手をグーにした。ジャンケンならチョキには勝てる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る