優しさ

「本当に?今の私でもいいの?」


 声が震えている。本当に小さな声で聞き逃しそうになる。俺は聞き逃さまいと、必死に耳を傾ける。俺カッコよ。


「ああ、当たり前だろ?こんなに可愛くて美人で面白い奴俺は他にしらねぇな」


 とは言ってみたものの、もう1人頭に顔が浮かぶ。さーて、だーれだ?誰だよ。


「私は本当のこと話したよ?女の子ってのも分かったでしょ?だからもう先輩でも、性別不明でもない!」


「そうだな。だからお前は夜道 桜。って事で夜道さん。よろしくね」


「夜道さん?何言ってるのかな?私は桜ですよ?」


「夜道さんでいいだろ」


「だーめ!桜!」


「分かった、分かった、「ちゃん」か「さん」どっちがいい?」


「いや桜ちゃんは気持ち悪いだろ」


 男ボイスで放つ言葉はいまだに慣れない。と言う事で性別不明先輩の面影は消え、今はただの可愛らしい女の子と化したのだった。


 あの時何をするのが正解だったのだろうか?本当にアレで正解だったのだろうか?

そもそも、あいつを泣かせた原因は俺だ

なんてことを考えていると午前授業はあっという間に終わった。特に答えは出なかった。


「形君!お弁当一緒に食べよ!」


「あぁ、いいぞ」


 返事する前からコイツは俺に隣の席なのにも関わらず、机をこっちにくっつけて来たのを俺は見逃さなかった。俺でなきゃ見逃しちゃうね。


「そう言えば形君って友達いないの?」


「まぁそうだな」


「意外ー!なんでぇー」


「部活やってないし中学からの同級生もいないからな。現時点において友達は桜さんだけかな。」


「人にお前は友達だ的なこと言わないほうがいいよー。向こうが友達と思ってなかった時しんどいからー」


「それは経験談かな?」


「ブッブー、私の初めての友達は形君なのです!」


「お前も言うのかよ」


 なんてバカップルみたいな会話をしてるなと思いながら、彼女を見る。出会って直ぐは鋭い目つきだと思ったが、笑った顔は100点で例えるなら満点だ。ミートボールを頬張る姿はいつぞやの夕日のように綺麗だった。


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