性別不明先輩
クラスにつき席に座る。いつも右隣は空席だ。しかし今日は違う。小型犬のようにキャンキャン吠える犬みたいな可愛い美人がいる。
「おっはー。形君!」
「おう、そういやどこから引っ越してきたんだ?」
「隣町だよ。ちょっと1学期に色々あってね」
「そうなんだ、悪いこと聞いたか?」
「大丈夫、大丈夫、私は優しいのだ!形君はこの高校の初めての友達って事で許してやろう!」
そうか、俺たち友達だったのか。そうかそうか、我ながら面白いことを考えついた。
「そうだよな!俺たち友達だもんな!ってことで桜くぅん!連れション行かなーい?」
流石にこのまま性別が不確定なのは気持ち悪い。さっさと確定させてしまおう。
「分かった、形君。私本当のこと言う。だからそう言うのやめて」
あって間もない俺たちだが、俺は多少なりとも桜のことを知っているつもりだ。こう言う時桜は必ず男ボイスで喋る。だから少しびっくりした。冷たい声で言う性別不明先輩はどこか切ない目をしてきた。
「さっき言ったけど私ね、転校した理由が、ちょっとアレなんだ」
「アレって?」
いつもの俺なら絶対に踏み込まない。でも何故か、そうしなければいけない気がした。
「私、こんなんだから、ちょっと浮いてたんだ。子供の頃から男の子に憧れててさ、普通はキラキラしたプリキュアとかを好きになるのかもしれないけど、私はヒーローが好きだった」
「でも気づいたんだよ。ヒーローが好きだったんじゃないって。男の子になりたくて、ヒーローが好きになったんだ」
冷たい顔のまま尚も続ける。
「だからさ……ちょっとずつ学校にもいづらくなって……ちょっとずつズル休みするようになったの。でね……家に篭ってね,でさ、そしたらね,罪悪感が襲ってくるんだ」
泣きながら喋っていた。俺には何もわからなかった。何もしてやれなかった。だからしっかり、話は聞いてやった。
「こんなんじゃダメだって分かってるけど、無理なんだよぉ。もう、うぅっ……
「このままでいいんじゃないかな?俺は今の桜も好きだな」
そう言って背中をさすってやった。これが、今の俺にできる、最大限のことだった。
内心は、泣くな泣くな、ここクラスだぞ。てかちょっと俺、イケメンすぎん?って思ってました。
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