バイト

「カフェオレとこのスモークサンドイッチ1つ」


「はい、カフェオレとスモークサンドイッチですね」


 バイトが始まり約2時間同じ動作を繰り返すだけなので、相当慣れてきた。でもたまに客の注文のリピートの時に噛んでしまう。正直1日目から接客は少し難易度が高すぎる。


「お疲れー。もう今日上がっていいよー。明日もよろしくね」


 ゆずるさんのお言葉に甘え今日は30分ほど早く終わらせてもらった。


「ジャム!あんた明日もバイトあんの?」


「ジャムって俺か?」


「あんたしかいないでしょ」


 やばい、少しキレそうだ。人にジャムとか言うあだ名をつけるなんて、不躾にも程がある。もー、怒っちゃうぞっ!(萌えボイス)


「どちらかと言うと、お前の方がジャムなんだが」


「それよりジャム何曜日がバイト?」


「俺は火曜、水曜、金曜だけど?」


「じゃあ明日も一緒だ。よろしくね。」


 にこやかに笑いかけてくれる咲さんは名の通り綺麗に咲いた花のようだった。


「あっ、ごめーん!そこの段ボール運んだいて!!」


 店の方からゆずるさんの声が聞こえる。


「了解です!」


 返事はしたがこれ全部か?割と多いな。


「私も手伝うよ」


「ゆずるさんは多分お前に言ったんだよ」


「普通力仕事は男に頼むでしょぉ?」


「いやいや、俺どこに運んでいいかも知らないんだが」


「この私についてきな☆」


 そう言ってトコトコと歩き出した。少し厚底のブーツが床と綺麗な音を奏で始める。カフェの少し暗めの雰囲気ともよくあい、お洒落と言って差し支えない状況だった。


「お前は持たないのかよ」


「フッフッフッ、ここのバイトは後輩を使い潰していいのだよ」


「咲!サボってないで働け!」


 きつめのゆずる先輩の声が飛んでくる。


「プッ……」


「おい笑うな!」


段ボールを運び終えた俺たちは、店の席に腰をかける。


「ふぅー」


「それ、咲もやってた」


 疲れた俺に、すごく整った顔立ちで、話しかけてくれるゆずるさん。俺はこの時ヒロインがゆずるさんなら良いのにと、思ってしまったが黙っておく。


 いや、ヒロインがジャムって決まってるってま?


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