転校生

 先生が入ってくるまでになんとか着席することができた。そしてもちろん一言目は


「今日から一緒に勉強する転入生を紹介します」


 この高校はそれなりに都会にもかかわらずなんと1クラスしかないのだ。そして入学倍率が馬鹿げているので、転校生は雀の涙ほどしか入ってこない。


「じゃあはいってきてくれー」


「今日からこのクラスに入らせていただく、夜道 桜です。よろしくお願いします」


 一瞬クラスの空気が止まった。そりゃそうだ。しっかり美人なのだから。いやちょっと待てよ?え?桜?


「性別不明先輩!!!」


 普段はクラスで大声を出さない真面目君のイメージを貼り付けていた俺だが、こればっかりはしょうがないだろう。あいつ2年じゃないのか?


 性別不明先輩はこちらを向きにこやかに手を振ってくれた。だが間違っている。いや何も間違っていないのだが。何が間違ってるってもうすんごい間違ってる。だから何が間違ってるんだよ。


「おおなんだ、知り合いいたのか、それなら良かった。影杉の隣に座れ」


 先生の言う通りに俺の隣の席に座りやがった。


「本当に一年生なのか?」


「そうだよ」


「なんで嘘ついたんだよ」


「面白いかなーって」


 テヘペロと、舌を出して笑う。テヘペロって古すぎだろ。


「わざわざ一年生にもう1人入るとか言う伏線貼らなくても」


「頭いいねぇー」


「流石に性別教えてくれよ」


「教えたら、性別不明先輩じゃ無くなるじゃん」


 別に性別不明先輩に未練とか全くナーシング!だけどな。


「もう先輩じゃないんだからいいだろ」


「そこー、イチャイチャするなー」


 先生にもそう言われる始末。でも今の言い方は女ってことだろう。


「女なのかよ」


「男だって言ってるじゃん」


 急な男ボイスで隠すが無理がある。


「じゃあ付いてんのかよ」


「見る?」


「やめろ気持ち悪い」


 なぜ会って数時間のやつのアレを見なきゃならんのだ。そんなこんなで俺のラブコメはまだまだ始まったばかりらしい。


 ああ、おとこの娘はありだな。ウェルカムウェルカム。


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