小説の本質が感情を伝える事ならこの作品からは、その哀しさが痛いほど伝わります。命という苦しみに囚われた者にとってその苦しい境遇から開放される、唯一の絶望的な希望。羽ばたくように全てから開放されて、身軽に楽になりたい。そんな辛い時期を経験をした方なら共感出来る作品です。
人の命は一握の詩。少年の頭上に広がる空は澄み渡っていただろうか。滲んでいただろうか——誰もがラスト一文に息を呑むことだろう。