その日までのこと〜勇者オルフェの独白

勇者オルフェなんて言われてるオレだが、そりゃあ間違うことはある。

実際にオレはいろいろと間違っていた。


最大の間違いは、幼なじみのパーティーメンバー、ルークを追放したことだが、まあ、それ以外にもいろいろとやらかしていた。


メンバーを追加するするときに、自分の好みの容姿で選んだり、派手で世間や偉い連中にウケのいいクエストばかり優先したり。


あとは、すぐに必要じゃねえのに、やたら値の張るお宝装備を買い込んでみたり、まあ、いろいろだ。


ルークのやつを追放したあとの最初のクエストで、オレたちはいきなり失敗した。


ラウドラウ迷宮、第7階層で、あらたに発見された洞窟とその先にあると思われる地底湖の調査って内容だ。

地底湖に巣食った主と思しき、水竜を倒して帰還したので、自分じゃ成功したと思い込んでいたのだか、やれやれ、途中の道筋のマッピングをだれもしていなかったのを、意気揚々とギルドに報告にいったときに指摘されて、はじめて気がついたわけだ。


ルークのかわりにパーティーにいれた教皇庁推薦の公爵家令嬢だった聖女からは、ボロクソにいわれるわ(聖女ってのがあんなに罵倒のスキル持ちだとは思ってなかった)、それでもそのときはまだ、S級パーティーでも、そんなミスをするのかとの笑い話ですんでいたんだ。


次のクエストは、12層の通称「白骨宮殿」っていわれる大空洞に巣食ったジャイアントスパイダーの討伐だった。


言っとくがただのでかい蜘蛛じゃないぜ。


それまでに何組ものベテランパーティーを餌食にし、A級パーティーを退けた、たぶんあれだ、変異種、とかいうやっかいな個体だ。


と、思う。


と言うのは、オレたちはそもそも白骨宮殿までたどり着けなかったんだ。

当然、用意しておくポーションやらの用意が十分でなく・・・。


いや、飾ってもしょうがない。


食い物も飲み水もだれも用意してなかったんだよ!


12層ともなれば、途中で二回は野営が必要になるんだが、だれもそんな準備を、していなかった。

誰かが当然やってると思ってな。



そういう細かいことは、ぜんぶ、ルークがやってくれてたのにやっと、オレは気がついて、まあちょっとそこで反省はしたんだ。


といっても、ほんとにちょっと、だ。


追放したことは正しいけど、迷宮の中で放り出したりせずに、なんか、もう少し円満なカタチで、少しばかりでも手切れ金を渡してやってもよかったんじゃないかと。


次は、王都からほど近いところにある某伯爵の荘園の警備だった。

ここで、とれる果物はある種の魔物にとっては、媚薬みたいな作用をするらしく、収穫前の一時期は、ひっきりなしに魔物の襲来を受ける。


もちろん警備の兵もちゃんといるので、オレたちはオマケ。

伯爵に、とってはS級に警備させたっていうはく付けが欲しかったんだろう。


なにごともなく、10日が過ぎれば、それで良かったのだか、9日目の夜に黒い羽をもったイモムシみたいな魔物の襲撃をうけた。


虫のたぐいが大っ嫌いなメリクルウスが、パニックになって最大火力の炎魔法をぶっぱなしたんで、イモムシどもは全滅。

果樹園の3分の1を、道連れに。


それで降格が決まった。


損害賠償を免れたのは、守備隊の責任者にとある子爵家の三男坊がいて、そいつの命を守るために、魔物をいっきに殲滅する必要があった、との言い分が認められたからだ。


もちろん、こいつはウソだ。


起こったことだけを順繰りに追ってけば、そういう見方もできるかもっ、て程度でそもそも、オレたちは守備隊に、子爵家の人間がいたことも知らない。


メリクルウスは、攻撃魔法だけじゃなくて、詭弁のスキルも獲得していたんだな。


A級に、降格したオレたちは、王都の東にある小さな村を悩ましている小鬼を退治するクエストを請け負った。

正直、S級、いや、降格してA級になったとはいえ、オレたちのパーティーが請け負うほどのクエストじゃねえ。


いや、調子が悪いのは、オレも感じていたし、結局、三つ続いての失敗だ。


なんか固い仕事で成功報酬を貰わないと、懐の方も寂しくなってきたんだ。

で、だ。


オレたちは、また失敗しちまう。


村を襲ってきた小鬼どもの群れを、見事に蹴散らしたのだが、巣を放ったらかしにしたので、オレたちが帰った3日後に、また村は小鬼ども襲われてしまうのだ。



ぐうぜん、通りかかったF級パーティーが村を救った。



そのパーティーのリーダーの名はルークといった。

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