王雅と茶々①……
王雅side
あの日あの場で会ったとき俺は心からこみあげてくるものがあった。
いつも遠目でしか見れなかった……
俺と茶々が会ったのはもう小さい頃の話だ。鬼はよく何年も生きられると言われるが俺たちも寿命は人間のと同じようにある。ただ年をとるのが遅いだけで見た目はわかいときのままを保ちやすい。俺は茶々が生まれてくる瞬間を見届けていた。なぜなら
「おぎゃあー!」
「元気に生まれたよ。ほらお母さんだよ。」
「無事でよかったー!」
俺たち家族は茶々の母の出産の手伝いをしていたからだ。このころ俺たちの国はまだわかれていなかった。
「
「こら。
「……
「……みんな騒がないで……ほら王雅様こちらに来てください。」
と茶々の母に手招きされて俺は初めて茶々に触れた。するとにこっと笑い俺の頬に口づけした。
「……!可愛い。」
「この子は王雅様のことが大好きなんですよ。」
「菫殿。よかったら王雅と婚約させてくれませぬか?」
「え?」
突然俺の母は婚約を申し出た。薫殿は突然のことで驚きうつけになっていた。
「私は歓迎ですけど……」
「俺の娘は俺を倒すことができる男にしかやらん!」
薫殿は頭から湯気がでるほどぷんぷんになっていてみんなで笑ったのはいうまでもない。
三年後
「おーが!」
「ほら茶々おいで!!」
俺は七つの年になった。茶々の家を訪れると俺をみて走って駆け寄ってくる茶々に手を伸ばした。だが途中で茶々は転んでしまい
「ふ……びぇー!!」
泣いてる茶々を慌てて抱っこし俺は
「愛おしい、自分のものにしたい。」
と思った。ちょうどそのとき菫殿がかけよってきて
「王雅様!!すみません、うちの茶々が……」
「気にしないで。こんな可愛いらしい人が俺の元に駆け寄ってくれたんだから……」
「おーが!ちゃちゃ眠いよ……。」
そのあと茶々から寝息が聞こえ俺の腕のなかで寝てしまった。布団で寝かせようと思ったが茶々が俺の着物をつかんで離さなかった。
「いつもお忙しいなか来てくださりありがとうございます。」
「礼はいらないよ。だって……
鬼の舞の継承者はもう君しかいないんだから。」
「そうですね……。」
菫殿の鬼の舞にはただ踊るだけでなく呪いを浄化する力を持つ。この時代人に呪いがかかることがある。たまにそれが鬼の仕業だとか言われることもある。
だが本当は人間族の王妃が呪いで鬼族に復讐をたくらんでいる。
鬼の舞は菫殿の一族が始めたものだった。鬼の舞にも種類が他に3つあるが本物の鬼の舞は菫殿の一族の舞だけだ。ほかの舞は浄化の力を持たない。
「今は茶々に舞を覚えさせています。そして本当の舞と偽物の舞の二つおぼえさせていて毎日疲れて眠ります。いつ命が狙われるかわからないですし。幼いながらも頭がよく覚えるのも早いです。」
「よく頑張ってるな……お疲れ。」
眠っている茶々に口づけをした。
「あと……最近ですが人間族の王子が茶々を一目気に入って城に出入りさせているんです。まだ王妃と王子が茶々を好いているのでいいのですが……」
「それがどうした?」
「茶々を王子の婚約者にさせようとしています。」
「……っ!茶々は俺の婚約者だ!!」
俺は声を荒げてしまった。茶々はだれにも渡したくない。だが茶々が人間の王族に目をつけられているとかなりやっかいだ。それにあっちはそろそろ人間と鬼を分けて暮らすという計画まであるらしい。
「王雅様!」
弥禄が茶々の家の扉を叩いた。
「もう!やっぱりここにいたんですね!あ!ご無沙汰しております。菫殿。」
「久しぶりね。弥禄。あなたも大きくなったわね。」
「で、何の用だ。」
「別にいいじゃないですか~!用がなくたって!」
「ふふふ。なんだか家族が増えたみたいでたのしいわ~。」
さっきまでの話の雰囲気と違くなった。
楽しい日常だった。
茶々と会うために公務を早く終わらせ茶々に会いに行くと菫殿が畑で仕事をやりながら茶々の面倒を見ていて、俺が代わりに茶々の面倒をみたりしていたり、薫殿が城に来るときもよく家族三人できてくれて食事の際俺の家族と一緒に他愛もない話をして笑って、泣き笑いして……
幸せが崩れるときはいつもなにかが壊れる音がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます